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長期遠征を締め括る昨季覇者とのアウェイでの一戦!一本のパスから始まった!


 
1月17日にクイーンズランド州入りしたグローリー。2回目の長期遠征での最終試合はホテル滞在45日目のMelbourne City戦。ブリスベン、シドニー、タスマニア、そしてメルボルンの4都市を移動しながらのアウェイロードだったが、そのロードの終結戦となった。
 

<Aリーグを知る記者の視点 A League Football Journalist’s Point Of View>
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2021 – 22シーズンAリーグ パースグローリー試合結果
Round 13(2022年3月2日)
Melbourne City 2 – 2 Perth Glory 会場:AAMI Park

 
アウェイロード途中、選手のコロナ感染で度々試合が延長となったが、7試合で2勝4敗1引き分け。長期遠征の総仕上げとなる、この日の8戦目の相手は前季のチャンピン、Melbourne Cityだった。

2月27日のタスマニアでの試合を終え、3月1日にタスマニアからメルボルンに移動したグローリーだったが、そのタスマニアの空港で電波障害に合い、3時間近く立往生。メルボルンのホテルに到着したのが日付が変わる直前の23時。そして翌日の2日に試合だったが、誰もが決して万全な体調ではなかった。その影響か…、試合早々に失点を許す。

前半8分にMelbourne Cityの背番号10番、フランス人のFlorin BERENGUER-BOHRERが、ゴール左上隅のきわどいコースを突いて先制する。そして、29分にはテンポよくサイドチェンジして、最後は背番号7番のMatthew LECKIEが豪快に左サイドネットを揺らした。

しかし、まさに“一本のパス”がグローリーイレブンの息を吹き返させる。そのパスは、左サイドバックの背番号8番、太田宏介からだった。

前半31分、空いたスペースへパスを要求する太田。そのスペースでボールを受けてドリブル後、相手DFをキレの良いフェイントで交わす。そして、真骨頂の左足で絶妙な浮き球のクロスを上げる。そのボールは、相手GKとDFの頭上を越し、背番号9番のBruno FORNAROLIの頭へ一寸の狂いなく渡った。反撃の狼煙となるグローリーの1点目は、FORNAROLIがそのボールをただ頭に当てるだけで十分だった。相手DFで元グローリー、キャプテンの背番号3番のScott JAMIESONは起こってしまった出来事をただ目で追うことしかできず、失点後は両手を腰に当て、お手上げといった仕草をとった。

その一連のプレーを太田は「高い位置を取りながら、ブランドン(背番号13番のBrandon O’NEILL)からのパスのタイミング、そして自分にとって得意なエリアでのプレーだったので。ただ、中にはブルーノ(FORNAROLI)しかいないことも見えていました。そこにしかけれないこともわかっていました」と試合後、話す。「けった直後はGKの陰に隠れてしまったブルーのだったので、頭に合わせてゴールになったシーンは見えていませんでしたね」と続けた。

つまり、クロスをける前は、まだ太田の位置からはFORNAROLIは見えていた。その時点で、太田は自分とFORNAROLIの距離を正確に体感し、身体で計算された距離感で相手DFを抜け切った後にボールをけっていることになる。試合の数日後、グローリーのRichard Garcia監督はあのクロスを「トップクラスなパスだった」と称賛している。

試合放映しているParamount Plusのブロードキャスターも「最もシンプルな形での得点」と解説したが、その最も難しい“シンプル”を実現させた太田のピンポイント・クロスは、チームメートの自信回復を大いに助けた。前半終了間際にもグローリーはチャンスを作り、蘇生された高いモチベーションはそのまま後半へと持ち込まれる。そして、後半10分。ここでも太田からの展開だった。

太田は「ボールを受けた瞬間、シュートを打とうと思ったんです。ただ、あの展開におけるベストな選択をしました」と振り返る。

太田は、ゴールに更に近くにいた背番号14番のJack CLISBYにパス。そして、次なるCLISBYの選択は後方でフリーだった背番号19番のCallum TIMMINSへのパスだった。TIMMINSはPAライン僅か外から強烈なミドルシュートを放つ。ボールは地を這い、相手GKの手をはじき、ゴールに吸い込まれた。

同点に追いついたグローリーは、逆転を目指し、尚も相手ゴールに襲い掛かる。後半21分には2点目をアシストしたCLISBYから1点目のFORNAROLIへ。FORNAROLIがディングでゴールを狙うも相手GKがキャッチ。一方、Melbourne Cityも総力をかけて決勝点を狙いにくる。アディショナルタイム3分を含む約30分間は両チームの一進一退の攻防が続いたが、最終的には勝ち点を分け合う試合結果となった。

試合後のインタビューでMelbourne Cityの元浦和レッズ所属、豪州代表の背番号15番、Andrew NABBOUTが落胆した表情で「ホームで、そして2点差を追いつかれるなんて・・・」と肩を落とした。

また、試合前に入場ゲートで太田が握手を交わしたMelbourne Cityの日本人選手、カナダのToronto FCからシーズン途中で移籍を果たした遠藤翼は、ベンチから戦況を伺い、この日の出番はなかった。

そして試合後、ホテルへの移動前に電話で太田は「試合を通して、守備的なポジションの中でも、ところどころ高い位置が取れたのは良かったでした。この勝ち点1をポジティブに受け取り、次からのホームゲームに臨みたいと思います」と、昨年の11月20日以来のホームゲーム2戦目に既に照準を絞っていた。

 
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【試合結果】
Melbourne City 2 – 2 Perth Glory
(ハーフタイム: 2 – 1)
会場:AAMI Park
得点:<Melbourne City> Florin BERENGUER-BOHRER(8分)、Matthew LECKIE(29分) <Perth Glory> Bruno FORNAROLI(31分)、Callum TIMMINS(56分)

<パースグローリーのスターティング・ラインナップ>
背番号33. Liam REDDY(GK)、背番号5. Jonathan ASPROPOTAMITIS、背番号8. 太田宏介、背番号9. Bruno FORNAROLI、背番号11. Nick FITZGERALD(背番号38. Ciaran BRAMWELLに75分に交代)、背番号13. Brandon O’NEILL(キャプテン)、背番号14. Jack CLISBY(背番号43. Adam ZIMARINOに75分に交代)、背番号18. Daniel STYNES(背番号7. Adrian SARDINEROに62分に交代)、背番号19. Callum TIMMINS(背番号26. Giordano COLLIに66分に交代)、背番号21. Antonee BURKE-GILROY、背番号29. Darryl LACHMAN
 

文:今城康雄(いまなりやすお)。パースの日本語メディア「The Perth Express」の代表兼、編集長。2005年のAリーグの開幕以来、リーグ公認のメディアとなっている「The Perth Express」のジャーナリストとしても、パースグローリーのホームゲームはほぼ全試合、記者席より取材を重ねてきた。2020年よりパースグローリー日本地区担当マネージャー兼通訳を兼務。

 
 
【参考】
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