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いよいよ開幕、Aリーグ2021-22シーズン!その前にグローリーの昨シーズンを振り返る(後編)



 
新型コロナウイルスの入国規制のため2020-21シーズン途中からチームに加入した背番号8番の太田宏介。デビュー戦でいきなり2つのアシストを記録し、以後、不動の左サイドバックでフル出場を続けた太田宏介に昨シーズンを振り返ってもらい、また来たる新シーズンについて語ってもらった。
 

<Aリーグを知る記者の視点 A League Football Journalist’s Point Of View>
Aリーグを知る記者の視点から更に詳しくパースグローリーの試合についてお届けする。

 
【太田宏介のスペシャル・ロングインタビュー】
 

<2月26日の対Brisbane Roar戦。後半の15分から出場だったが、即座に2アシストを記録。Aリーグデビュー戦を華々しく飾った(試合は3-1で勝利)Photo from VIP, Darren Speedie>
 
 
昨シーズンを終えた時の感想を思いつく限り聞かせて下さい。

「半年間、本当にあっという間でした。1月16日に入国して、2週間のホテル検疫を経て、1月末からシーズンが終わるまで必死に駆け抜けた6か月間でした。あの短期間で21試合をこなした経験は、今までになかったですね。それに、準備期間がほぼないまま、ぶっつけ本番で試合に臨み、なおかつそこで結果を残さないと次の契約がないという状況だったので、今思えば自分でよく“あの”選択をしたなと思います」

なぜ、その選択をされたのでしたか?

「Jリーグ内のチーム移籍も大変なことなのに、国を飛び越えて、しかも家族も連れて、国外への移籍はなかなかタフなのは分かっていました。自分の中で変化を求めていたんだと思います。精神面や肉体面でも、よく壊れなかったなと思います(笑)」

振り返ると、入国前からトラブル続きでしたよね。

「きつかったですね、先が見えなかったので。いつかは(オーストラリアへ)行けると思っていましたが、このコロナのご時世、日本にいる時にオーストラリアの状況が全く分かっていなかったので、あそこまで待たされるとは思ってもいなかったです。今だから話せますが、実はパースに行くことは無理なんじゃないかと思い、一回心が折れて、契約を破棄し、他のチームを探すことを代理人に相談しました。出国に向けて家も出て、全て準備している中での待機でしたので。荷物を持った状態で明日行けるのか、1か月後なのか全く分からなかったので、家族にも心配をかけました。その状況の中、身体も動かしていなければならなかったので、本当にきつかったですね」

ビザ、そして入国許可が下りた時はどんな思いでしたか?

「オーストラリア国民ですら帰国が厳しかった中、自分や家族を入れてもらえたのは奇跡だったのかもしれませんね。感謝しかないです」
 

<3月14日の対Central Coast Mariners戦。Aリーグデビュー後の4試合目となるこの試合はフル出場を果たし、アウェイゲームでの勝ち点1獲得に貢献した(試合は2-2の引き分け)Photo from Perth Glory>
 
 
ただ、オーストラリアに入国できれば、パースでのパフォーマンスにはそこまで心配はされていなかったのでは?

「いや、そうでもなかったですね。移籍の意思を名古屋グランパスに伝えてからチームに合流できるまでの数ヶ月間は、個人トレーニングしかできなかったので、いきなりプレーするというのは不安でしかなかったです。なので、グローリーでの1試合目、2試合目でいきなり結果を出せたことは自分にとっても気持ち的に乗れたし、チームに入るためのきっかけになり、チームにもインパクトを与えられたかなと思います」

一般的にAリーグはJリーグより格下と言われていると思います。戦う場所をそのAリーグへ変えたのはなぜだったのですか?

「格へのこだわりはなかったです。それよりもこの歳になり、サッカーと生活のバランスを考えるようになりました。新しい所に行って、好きなサッカーを続ける。その新しい所で家族と一緒に暮らすという経験が今後の自分のためになると確信していましたし、そのようなチャレンジを自分ひとりではなく、家族でしたいと思ったからです」

自身のAリーグデビュー戦後、なかなかチームは試合に勝てなかったですね。あの時の心境は?

「まだまだ先に試合があったので、その日その日の試合の結果に囚われず、前を向こうと思っていました。個人的には気にしていませんでしたね。それよりも、自分はコンディションを戻していくことを考えていました」

コンディションを戻しながら毎試合臨んでいたんですね?

「十分な準備期間がなく、チーム練習ができたのもデビュー戦の6日前でしたし、その後はコロナの関係で試合日程もかなり過密だったので疲労度も高く、全ての試合で100%の力を出し切ることは難しかったです。ただ、難しい状況のなかでも自分の中では全力でプレーできましたし、久々に試合をたくさんこなせたことは実戦から離れていた自分にとっては良かったなと思います」
 

<3月19日の対Western Sydney Wanderers戦。アウェイ3連戦の3試合目。フル出場を果たすも試合は0-3で敗戦。Photo from Perth Glory>
 
 
チームメイトとの連携面でも苦労はありましたか?

「次の試合に向けた調整の練習やリカバリーがメインだったので、パースがどんなサッカーをするのか、チームメイトの特徴なども試合をこなしながら探っていった感じですね」

ひとシーズンを経験して、AリーグとJリーグの違いは何か見えましたか?

「全体的に緊張感はJリーグの方が高いと思います。練習前のロッカーはJリーグの方がピリピリしていますが、ここはフワッとしていますね。居心地は良いですが(笑)」

サッカー以外の新生活でストレスを感じて、サッカーのパフォーマンスに影響したということはありましたか?

「異文化や言葉の不自由で感じるかもしれないストレスは、こちらに来る前からわかっていたことですし、オランダに移籍した時もその点は経験していたので。なのでサッカー以外のストレスがパフォーマンスに影響したということはないです」

その努力が実を結び、契約を延長。しかも単年ではなく、2年契約を結ぶことができたことについては?

「30代中盤の選手に複数年の契約はJリーグでもなかなか無いので、2年契約の提示は正直嬉しかったです。ゼロの状態から半年間の勝負で勝ち取ったこの成果はシンプルに良かった思います」
 

<3月27日の対Newcastle Jets戦。太田を中心とした守備陣が10人のグローリーへ6試合ぶりの勝利を届ける(試合は2-1で勝利)Photo from Perth Glory>
 
 
さて、日豪での違うサッカー文化に飛び込んだ数少ない日本人の一人ですが、今後続くかもしれない後輩に何かアドバイスはありますか?

「日本では海外でのプレーに憧れる若い選手はたくさんいます。ただ、先程の格の話でも出ましたが、ここオーストラリアはステップアップを考えている選手が来るところではないかもしれません。しかし、自分もそうでしたが、キャリアの終盤での選択肢としては、充実すると思います。一方で、Jリーグで試合に出場できない若い選手がまずAリーグで試合に出て、Jリーグに戻ってAリーグでの経験を糧に出場機会を増やし、そしてヨーロッパを目指すという過程におけるAリーグ移籍は良いかもしれません。オーストラリアは身近に思えているけど、Aリーグを知っている選手がそこまで多くないのも実情なので、その点は伝えていけたらと思います」

では最後に、来たる新シーズンに向けて自身の抱負をお聞かせ下さい。

「怪我せず、自分が楽しくサッカーをプレーしてハッピーに過ごせられたら、それに越したことはないと思います。それと、パースにはたくさんの日本人が住んでいます。サッカーを通して日本人としての価値を高められるように、そして、パースに住む子どもたちに少しでも夢や希望を与えられるようなプレーができたら嬉しいです」
 

<5月9日のMelbourne Victory戦(試合は2-1でグローリーの勝利)も多くの日本人ファンがスタジアムに詰めかけた。Photo from Perth Glory>
 
 
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関連(外部リンク):太田宏介オフィシャルインスタグラム
関連(外部リンク):太田宏介オフィシャルブログ
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