走者の暴走は許さない
5番サード Tomomi


 以前ベトナムを旅行中、「海の桂林」と謳われるハロン・ベイを巡るツアーに参加した時のこと。朝ハノイを出発し、昼ハロン・シティ着。昼食を終え、いよいよクルージング!意気揚揚と船着場へ向かうバスに乗り込んだ。が、近いはずの船着場になかなか着かない。何かおかしい。そういえばツアーのガイドも客も、昼食前と違うような…。
私「あのぅ…このバス、これからハロン・ベイツアーに向かうんですよね?」
ガイド「いいえ。ツアーを終えたお客さんを乗せて、ハノイに戻るのよ」
私「…私、今朝ハノイを出てきたばかりなんですが…」
ガイド「船着場行きのバスは随分前に出発したわよ。置いていかれたみたいね」
 ガイドのクールな対応に、そのままハノイにとんぼ返りまで覚悟したが、最終的には翌日から別のツアーに合流する手はずを整えてくれた。とはいえ、予定されていたいくつかのアトラクションを諦めねばならず、これだけだったらラッキーどころか、ただの「ついてない人」である。しかし、合流したツアーで新たな友人を得ることになり、そのうちの1人がPerth在住だったことがきっかけで、私は今、ここにいる。以前からAustralia行きは決めていたが、当時はPerthという地名すら知らなかったのに。もし彼らに出会わなかったら、Perthに来ることもなく、ましてやここで、こうして文章を書くこともなかったかもしれない。そう考えたら、あの時置いてけぼりくらった私って、すんごくラッキーじゃない?! …細かいことは考えまい。だって今が幸せだから。ものは考えようである。
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