この日の試合を決定づけたのは太田の左足だった。あの計算された正確無比なクロスが上がらなければ、あのような圧勝劇はなかったかもしれない。
<Aリーグを知る記者の視点 A League Football Journalist’s Point Of View> 今シーズン(A League 2020-21 Season)から、Aリーグを知る記者の視点から更に詳しくパースグローリーの試合についてお届けする。 |
2020-21シーズンAリーグ パースグローリー試合結果
Matchweek 21(2021年5月16日)
Perth Glory 5 – 1 Western Sydney Wanderers 会場:HBF Park
前節はクラブ側の配慮で休養が宛がわれたが、この試合は満を持してのスターティングイレブンに戻った背番号8番の太田宏介。相手は、前線からプレッシャーをかけ、DF陣のボール回しからプレスをかけてくる戦術で、前回もグローリーに黒星を付けているWestern Sydney Wanderers。太田も「良いチームでしたね」と評していた。
この日のグローリーの布陣は3-5-2。太田は3バックの一枚ではなく、MF5枚の左ワイドのポジションが主戦場となった。今までの最後列での守備重視から、攻撃参加も期待されるポジションだ。ただ、前日練習では前に抜けるプレーというより、味方FWの裏を抜けるパスの供給をコーチ陣は太田に指示していた。
しかし、太田のポテンシャルはコーチの期待よりもはるかに上を行っていた。開始4分、太田は相手DFとの間合いを測り、背番号17番のキャプテン、Diego Castroへ縦パスを要求。その瞬間に猛烈なスプリットでライン際を駆け上がる。パスを受けた時点ですでに相手DFを置き去りにしていた。一瞬中を見る。そして、伝家の宝刀の左足を振り抜いた。
芯を食ったボールが絶妙なスピードでゴール前に飛ぶ。そのボールは、糸を針で通したように相手DFの間を直進してきた背番号10番のAndy Keoghの頭に。Keoghは、ただ自分の頭に当てればよかった。
ゴールの瞬間、Keoghは太田を指差す。太田のクロスが全てだったことはKeoghは分かっている。歩み寄ってきたKeoghを両手でハグする太田。笑顔が爆発する2人にフィールドフレーヤーが囲み、さらに輪になって喜ぶ選手たち。
過去のシーズンではチーム得点王にもなっていたKeoghにとって、このゴールがなんと今シーズンの初得点となった。Keoghのあの満面の笑みから、太田のクロスにどれだけ感謝したか図りしれない。前半終了直後にKeoghがウォーターボトルを差し出した太田に声をかけた。当然、ウォーターボトルへのお礼ではなかったことは間違いない。
<左サイドを駆け上がり、ゴール前の味方選手の位置を正確に確認してクロスを上げる背番号8番の太田宏介。Image from Kayo Sports Screenshot>
<2人の相手DFの間を走り抜け、頭で先制点を叩き出した背番号10番のAndy Keogh(左から5番目の選手)。Image from Kayo Sports Screenshot>
<得点直後にピンポイントの太田のクロスを称えるKeogh。Image from Kayo Sports Screenshot>
<喜びを爆発させた2人と、グローリーのストライカー、背番号9番のBruno Fornaroli(写真右)。Image from Kayo Sports Screenshot>
早い段階で先制したグローリーの勢いに気負いしたのか、チーム全体の前からのプレッシャーが弱まってしまったWanderers。そのスキを見事に突いた2点目が生まれる。またしてもKeoghだった。
センターサークル付近の約40メートル以上もある位置からKeoghがシュートを放つ。相手GKの背番号30番、Daniel Margushが前に出ているのを事前に察知して、ロングボールをけり込んだ。
バックステップで天高く手を上げるMargushだが、ボールは無情にも頭上を通り抜け、ネットを揺らした。グローリーが追加点を得る。
相手DFのFWに対する一歩の寄せが今まで通りだったら、Keoghもあの位置でシュートを打たなかったかもしれない。ただ、太田のスーパー・クロスが引き金の先制点で、相手DFの精神的ダメージが影響した一点だったとも言える。
その後の試合展開は、この日がちょうど誕生日だったKeoghのためのショータイムとなった。なんと後半にも2点をもぎ取り、一試合4点を記録。自身にとってもグローリーでの一試合4得点は初のことで、グローリーでは2011-12年シーズンのShane Smeltz以来となった。
<試合前はグローリーにとって厳しい戦いになると予想されていたが、蓋を開けてみたら大差の勝利でグローリーに軍配が上がった。そのきっかけを作ったのが太田だった>
試合前にドレッシングルームで「行ってきます」と硬く握手を交わし入場選手の列に加わった太田。ハーフタイムには「まずは一本ですね」と自身のアシストについて触れ、試合後はピッチで口に水を含みながら「良かったですね!」と安堵の笑みを見せた。
この日は、試合後に「パースグローリー太田宏介選手を応援しよう!」の握手&サイン会も催され、当企画に申し込まれたファンは試合直後の太田との一時の交流を楽しんだ。
握手&サイン会も終え、ドレッシングルームで監督からの「Let’s start again(また、ここからがスタートだ!)」の激励を受け、スタジアムを後にした太田。あの秀逸したクロスについては「久しぶりにパチッンと会いましたね(笑)」と振り返っていた。
<「パースグローリー太田宏介選手を応援しよう!」の握手&サイン会の模様>
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<試合後、スタジアムからの観客の歓声に拍手で応える太田>
【試合結果】
Perth Glory 5 – 1 Western Sydney Wanderers
得点:
<Perth Glory>
Andy Keogh(5分)
Andy Keogh(24分)
Andy Keogh(66分/PK)
Andy Keogh(72分)
Joel Chianese(90+4分)
<Western Sydney Wanderers>
Bruce Kamau(49分)
文:今城康雄(いまなりやすお)。パースの日本語メディア「The Perth Express」の代表兼、編集長。2005年のAリーグの開幕以来、リーグ公認のメディアとなっている「The Perth Express」のジャーナリストとしても、パースグローリーのホームゲームはほぼ全試合、記者席より取材を重ねてきた。2020年よりパースグローリー日本地区担当マネージャー兼任。
【参考】
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