<写真:QLD州での1週間のホテル隔離を終え、チャーター機でパース空港に降り立ったグローリーの選手たち。そして自宅隔離後、年明けに練習が再開した>
当初は、2021年11月26日の対Western United FCを皮切りに、1ヶ月以上に及ぶアウェイロードには5試合が予定されていた。2022年1月5日のMelbourne Victory、1月8日のMelbourne City、そして12月18日のBrisbane Roarと12月23日のAdelaide United。しかし、またもやコロナの壁が立ちはだかった。
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昨年末のアウェイロードは東部での州境間規制を考慮し、当時新型コロナウイルス感染の確率が最も低いとされた南オーストラリア州を遠征の起点とするオプションが取られ、またクリスマス前に地元西豪州への帰州、そして検疫隔離を回避できるような日程が組まれた。また、この遠征が長期に渡るということもあり、遠征中は家族のいる選手、関係者は遠征先に家族を呼び寄せるといった計画が立てられていた。
しかし、その計画は早々に一変する。
まず、その南オーストラリア州が11月23日よりニューサウスウェールズ州やオーストラリア首都特別地域、ビクトリア州との州境閉鎖を緩和したことにより、新型コロナウイルス感染者が同州に多く流れ込んだと考えられ、これによってこのアウェイロードに入る前、一番安全と思われた南オーストラリア州の状況が急変した。そしてその状況を受け、11月27日より西豪州政府は、南オーストラリア州との州境規制を厳しくし、14日間の隔離を強いた。これにより、家族を呼び寄せることが事実上できなくなった。
さて、メルボルンでの3戦を終えたチーム一行は、通常なら12月18日の対Brisbane Roarのためにクイーンズランド州へ移動し、その後、12月23日のAdelaide United戦のために南オーストラリア州に移動すればいいのだが、前述したように今まで新型コロナウイルス感染者がそこまで確認されていなかった南オーストラリア州を起点とすべく、アデレードに移動していた。
ただ、南オーストラリア州において見えない感染は拡大していたのだろう。チームはその南オーストラリア州を経て、12月13日にブリスベンに移動。そして、18日の試合に向けて準備をしていたが、16日に選手の一人がウイルスに感染していることが判明した。
それからのクイーンズランド州政府、警察の公示や行動は早かった。同日、グローリーの選手や関係者全員を濃厚接触者として宿泊ホテルから隔離ホテルへ移送し、扱いも決して良いものとは言えなかった。
翌日の17日、グローリーの監督であるRichard GarciaとクラブのCEOが会見に臨む。Garciaは「チーム全員が濃厚接触者で、現時点では14日間のホテル隔離が言い渡されている。今はそれしか言えない」と唇をかみ、表情には無念さをにじませた。
隔離翌日から選手間で、そしてクラブ首脳陣はAPL(The Australian Professionals Leagues)と連日オンラインで協議を繰り返した。時には激論になった。
当然、14日間のホテル隔離はアスリートにとっては致命的。常日頃からハードなトレーニングを積んでいる選手の身体の動きを止めることは、再開の際に種々の問題を引き起こすリスクが高くなる。その点を回避するためにも、またメンタルヘルスケアの観点からも1日も早く、隔離を終える必要があった。
そして12月21日、朗報が舞い込む。、チーム内のオンラインミーティングで正式に23日にホテル隔離を終え、パースに戻ることができるようになったと発表があった。クラブがクイーンズランド州政府、警察、APLと連日交渉し、それが実を結んだ形となった。また同日、日々刻々とコロナ禍の状況は変わり、規制の内容も州ごとに異なる中、クイーンズランド州がホテル検疫期間を14日から7日に変更したのもチームにとって追い風となった。ホテル検疫は12月16日からだったので、本来だったら30日までの隔離が必要だったが、23日に終え、チャーター機による西豪州への帰州が許された。そして、当初の14日間規定は存続されるも、残りの1週間は自宅での隔離となった。
年が明け、2022年1月2日。選手とコーチ陣は、39日ぶりにいつものピッチで練習を再開した。そして、1月17日に19日のBrisbane Roar戦に向けてチームはまた旅だった。試合は42日ぶりとなる。
パースグローリーの背番号8番、太田宏介にブリスベン(クイーンズランド州)でのホテル隔離を振り返ってもらった。「家族も遠征先に来れなくなって、でもクリスマス前には帰れると思っていたけど、それもできなくなるかもしれないと聞いた時は本当にがっかりでした。とにかく、家族に会いたかったです。オーストラリアでのクリスマスは初めてだったので、子どもと過ごしたかった」と話し、「ただ、ホテル隔離が半分になり、自宅隔離でもパースに帰れて、家族に会えることが分かったときは嬉しかったです!結果的に隔離中でしたが、クリスマスを家族と一緒に過ごせたので良かったです」と。
しかし、これからのことについては「(12月8日の)City戦後、チームでまとまった練習もあまりできずに、その後トータル2週間の隔離。年明けに練習は再開できていますが、また2週間後には遠征先で試合という日程は大丈夫かなといった不安もあります。ただ、メンバー全員がけがをすることなく、連戦を戦い抜いて、良い結果が出せるよう頑張ってきたいと思います」と話してくれた。
<年が明け、いつものピッチで練習が再開。練習後、クラブ関係者のインタビューに笑顔で応える背番号8番の太田宏介>
文:今城康雄(いまなりやすお)。パースの日本語メディア「The Perth Express」の代表兼、編集長。2005年のAリーグの開幕以来、リーグ公認のメディアとなっている「The Perth Express」のジャーナリストとしても、パースグローリーのホームゲームはほぼ全試合、記者席より取材を重ねてきた。2020年よりパースグローリー日本地区担当マネージャー兼通訳を兼務。 |
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