サッカーAリーグのパースグローリーに2020年12月に移籍した元日本代表の太田宏介選手が、鈴木徹在パース日本国総領事を表敬訪問しました。
太田選手のパースグローリーへの移籍は2020年12月17日に発表となりましたが、同選手は新型コロナウイルス感染防止策のためオーストラリア入国にそれから約1ヶ月を要し、入国が叶った後も2週間のホテル検疫、直後のロックダウンを経験しました。しかし、ロックダウンが解除されてもチームメイトがバブル検疫に入ったため、チームの全体練習に参加できたのも2月の後半でした。検疫に練習、生活のセットアップをする中、3月に入り、在パース日本国総領事館の鈴木徹総領事のもとへ表敬訪問した太田選手。ここでは、お2人の話の一部を以下にてご紹介します。
表敬訪問日:2021年3月12日
■渡豪とコロナウイルス
太田選手:「日本を1月中旬に発って、2週間のホテル検疫やその後のロックダウンと、正直大変でした」
鈴木総領事:「こちらに来る前、日本でもコロナの関係でいろいろと制約があったのでは?」
太田選手:「はい、ありました。昨年は外出もできなかった中、自宅と練習場の行き来だけしか許されてなく、それ以外の不要不急の外出はできませんでした。今まで普通にサッカーができていたことが、改めてどれだけ幸せだったかということを思い知らされました」
鈴木総領事:「その後パースに来られ、ホテル検疫も経験されたのですね」
太田選手:「2週間のホテルの隔離で体重がかなり減ってしまいました。筋力も落ちてしまいました。ホテルでは、主にサンドイッチしか出てこなかったので(笑」
鈴木総領事:「そこはアスリートと一般人の違いですね。私の場合は、運動しないと脂肪がついてしまいますし(笑」
太田選手:「ただ、今はこちらに来て、マスクのない生活ですごく幸せです」
鈴木総領事:「ここでは、去年の5月ぐらいからずっと市中感染がゼロ。今年に入り1月31日からのロックダウンはありましたが、あれはホテルで陽性者が1人出ただけでしたので」
太田選手:「あのロックダウンも(ホテル検疫が終わり)、個人的には“よし、これからだ!”という時になってしまって・・・。あの1週間もきつかったですね」
■日本でのサッカーについて
太田選手:「ここ(パース)に来る前は、名古屋グランパスというチームでプレーしていました。ただ、キャリアの中で長い時間を過ごしたのは、FC東京というチームでした」
鈴木総領事:「全日本のチームでもプレーされてましたよね?」
太田選手:「はい。ただ、それは過去の栄光ですね(笑。実は、オランダでも1年間、プレーしていた経歴があります。自分としては1年ではなくもっと長い間、行って居たかったという後悔もあったので、いつかキャリアの中でまた海外に、それも英語圏の国に行きたく、オーストラリアかアメリカでプレーしたいと思っていました。そうしたら、パースのチームからオファーを頂き、今に至るという感じです」
■オーストラリアのサッカーについて
鈴木総領事:「こちらのサッカーについてはどうお考えですか?」
太田選手:「ここオーストラリアのAリーグは、これからすごく可能性のあるリーグになると思っています。有能な若い選手も多くいますし」
鈴木総領事:「そうですか・・・。あれだけ大きい体で突進して来られると怖くないですか?(太田選手は)ディフェンダーなので、攻めてくるところを守らなくてはいけない。威圧感はすごいでしょうね。怪我とかも怖いですよね?」
太田選手:「はい。怖いですよ(笑。自分は、オーストラリアとの代表戦にも出場したことがあるんですが、(横に)並んだ時の威圧感はありましたね。体の強さが(日本人とは)全然違うので」
■オーストラリアでのサッカー
太田選手:「通常ならば週末のみの試合だったと思うんですが、今シーズンはコロナの関係で試合の組み合わせが不規則なんです。実際、ほとんど休みがなく。水曜日に試合をしたら、また土曜日に試合をして。野球は毎日試合をしていますが、サッカーだと通常4~5日間開けないと体がきついんです。アウェイの時はそれに移動までも加わるので更に負担が大きくなります」
鈴木総領事:「90分間、全力疾走し続けてますもんね」
太田選手:「はい・・・。こっちに来て初めて経験したのがアウェイ戦の時、試合の前日に試合会場まで移動しますが、例えば朝8時過ぎの飛行機に乗って、シドニーのホテルに着くのが夕方の6時頃なんです。時差も今は3時間ありますし。日本では、絶対そんなことはなかったので。午前中練習して、午後飛行機乗るにしても、大体1時間くらいしか乗らないので、(アウェイの地で)その後ホテルでゆっくりする時間もあり、次の日の試合に備えられるんです。しかし、ここでは前日が丸一日移動で、5時間のフライトの後に、バスにも2時間乗って・・・。なので、翌日に試合ができるコンディションを作るのは難しですね。ただ、そういうものにも慣れていかないといけないんですけどね」
鈴木総領事:「アメリカのメジャーリーガーも凄いハードな移動スケジュールだと聞いたことがあります」
太田選手:「飛行機も、チームメイトはみんな体が大きいので、ちょうど3席あるうちの真ん中だった場合、5時間ずっと(肩をすぼめ)こんな感じで乗っていなければなりません(笑」
■日本とオーストラリアのサッカーについて
鈴木総領事:「日本のクラブとこちらのクラブでは、(違いは)いかがですか?」
太田選手:「サッカーをする環境は、やはり日本の方が良いですね。スタジアムの規模とかもそうですし。給料面も日本の方が何倍もいいですね(笑」
鈴木総領事:「日本とオーストラリアが、国際試合をすると“いい試合をする”といった印象ですが」
太田選手:「AリーグとJリーグのクラブを比べたら、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)などの大会だと日本のクラブが勝つことが多いですが、代表レベルの試合になるとそんなに変わらないと思います。技術力では日本人はすごく長けていて、組織力でも日本のサッカーは強いと思います。しかし、実践になった時のファイティングスピリットというか気持ちの部分で、オーストラリアや他の世界の国の選手の迫力は凄まじいものを感じますね」
■パースについて
太田選手:「15年間、ほとんど日本でキャリアを築いてきて、そこで日本代表にもなり、Jリーグのベストイレブンにもなり、個人で取れる賞もいただいて、全ていただいたかなといった満足感もあったので、どこかで1度環境を変えて、また若い頃のような、プロ1年目のようなギラギラ感をまた思い出したいと思ったのもこちらに来た理由の一つです。そして、海外で暮らすということはなかなかできることではないので、お金よりも何よりもここで生活することを優先させて、こちらに来ました」
鈴木総領事:「そう考えると、こちらでの生活はご家族やご本人にとってもなかなかできないご経験ですよね」
太田選手:「はい、家族ともに幸せだと思います。今でも旅行で来ている感じで、まだこっちに住んでいるという実感がなく・・・」
鈴木総領事:「ここでは、天気予報で35度といっても木陰に入ると涼しいです。また、日本のような寒い冬はありません。朝晩は気温が下がっても(日中は)暖房もほとんど使わなくても大丈夫です。ちょっと寒いなと思っていても、水遊びをしている人もいますし(笑。そういう意味では最高の環境ですよね」
太田選手:「日本は30度を超えると湿度もあるので、夏場の試合は暑くて動けないですが、こっちはカラッとしていますね」
鈴木総領事:「そうですね。食べるものも何でも揃っていますし、日本のものもあります。ここでしか食べられないものもありますし。もう観光はされましたか?」
太田選手:「まだまだ全然行けてなくて。これから休みがあったら行きたいと思ってます!」
鈴木総領事:「今やっと州境が開き、いろんなところに行けるようになりましたもんね。なかなか厳しい時が続きましたが、日本に比べれば、ここは無菌状態です」
太田選手:「日本にいる時は、すぐに何かある度に除菌して、マスクも絶対でしたし。出かける時に1歳半の息子が“パパ、マスク”って持ってくるんですよ。子どもが、あんなに小さいのに出かける時にはマスクをしなきゃいけないという事実を理解しているという状況が、とても辛かったですね」
鈴木総領事:「是非、ここにいる間はご家族と楽しい時間を過ごしてください。北は、昔から日本との関係も深いブルームという町があります。和歌山県の太地町と姉妹都市なんですが、大きな日本人墓地なんかもあるんですよ。そして南には、アルバニーという町があります。そこは、夏でも結構涼しい所なんです。(ここは日本とは逆に)南に行けば行くほど寒くなって、北に行くと暑くなるので。私も最近、それにはやっと慣れてきました(笑」
太田選手:「早く自分も含めて家族全員が、こっちの生活に慣れればと思っています。今のシーズンは5月、6月に終わってしまいますが、来たからには2年、3年と長くこちらでプレーしたいと思っています」
鈴木総領事:「ご活躍をご祈念しておりますので、お身体にはくれぐれもお気をつけて」
太田選手:「今日は貴重なお時間、ありがとうございました」
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関連(外部リンク):太田宏介オフィシャルインスタグラム
関連(外部リンク):太田宏介オフィシャルブログ
関連(外部リンク):太田宏介オフィシャルツイッター
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関連(外部リンク):在パース日本国総領事館ウェブサイト/Website of Consulate-General of Japan in Perth, Western Australia
関連(外部リンク):在パース日本国総領事館フェイスブック/Facebook of Consulate-General of Japan in Perth, Western Australia
太田宏介(おおたこうすけ)
1987年7月23日生まれ。東京都町田市出身。178cm/78kg。ポジションはDF。麻布大学付属渕野辺高等学校時代は2年、3年時に全国高等学校サッカー選手権大会に出場。卒業後、2006年に横浜FCでプロサッカー選手としてのキャリアをスタートさせる。その後2009年に清水エスパルス、2012年にFC東京、2016年にオランダ1部リーグのフィテッセ、2017年にFC東京に復帰するも2019年に名古屋グランパスに移籍。そして、2020年12月に豪州1部リーグのパースグローリーに完全移籍。日本代表歴はU-19とU-20を経験し、A代表では2010年から2016年にかけて7試合(5試合先発)に出場している。2014年11月のキリンチャレンジカップ2014のオーストラリア戦には先発フル出場している。Jリーグ出場試合数は350試合以上、受賞歴は2014と15年にベストイレブンに選出など。また、同両年にはDFでは史上初となる2年連続2桁アシストをマークし、DFによるアシスト記録として今もその偉業は塗り替えられていない。