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【パースエクスプレス・マガジン】スペシャル・インタビュー 西オーストラリア・バレエ団 メインキャストで 踊る日を目指す


 

世界的にも有名なバレエコンクールに入賞したことでスカラーシップを獲得し、2014年にモナコにあるバレエアカデミーに入学を果たす。そして4年間、高いレベルでバレエを学び、この度西オーストラリア・バレエ団(West Australia Ballet/WAB)とプロ契約を交わした武藤圭吾(むとうけいご)さん。中学生の時、単身でヨーロッパに渡り、本場の厳しい環境で揉まれてきた経験を活かし、プロを勝ち取った武藤さんは更なる高みを目指してパースという新たな地での挑戦が始まった。そんな武藤さんにバレエを始め、モナコにあるバレエアカデミーに入学し、WABに入団したきっかけや将来の目標などについて伺った。
 
写真提供・取材協力: 西オーストラリア・バレエ団(West Australia Ballet/WAB)
 

西オーストラリア・バレエ団の別の日本人バレエダンサーのインタビュー記事も読む

 

 

—まず、今回のWABの一員になられた経緯をお聞かせ頂けますか?

今年2019年の6月にモナコ王立アカデミープリンセスグレースを卒業予定だったんですが、先だってアカデミーの校長先生からWABがダンサーを探しているということを伺いました。そして、3月中旬に自分のダンスを動画に収め、WABに送り、その後ビデオオーディションをして頂き、WABから直ぐに一員になれるといったオファーを頂きました。

 

—遡って、バレエを始めたきっかけを教えて下さい。

母が元バレエダンサーで、今は日本でバレエ教室を開いています。物心がつく前からバレエのレッスンは母から受けていました。ただ、小学生の頃はバレエがあまり好きではなくて、放課後は友達とサッカーやバスケットボールで遊びたかったんです。でも、中学1年生の時、あるダンサーのもの凄いパフォーマンスを見たことで、自分もあのように踊れるようになりたいと思い、バレエに真剣に取り組むようになりました。その後、バレエのコンクールに参加するようになって、コンクールでの自分のダンスを見てくれたモナコ王立アカデミープリンセスグレースの校長先生よりスカラーシップを頂き、2014年から同アカデミーに留学することになりました。

 

—中学生で単身モナコへ留学されていますが、いろいろと大変だったのでは?

今回のオーストラリアへも一度も来たことのない所でしたが、あの時も校長先生以外、友達や知り合いがひとりもいなかったので、自分で何もかもやるしかなかったですね。ただ何とかなるかなといった感じはありました。アカデミーが、イタリアとフランスの間のモナコにあって、公用語がフランス語でしたが、アカデミーにはいろんな国から生徒が来ていたので英語でみんな会話をしていました。最初、言葉の問題はありましたが、フランス語も学び、英語も直ぐに慣れました。一般の勉強は、日本の高校の通信で学んでいました。さすがに最初は、両立が大変でしたね。
 

—新地となるパースの印象はいかがですか?

ビデオオーディションから約3週間後の4月6日にはパースに到着し、すでに8日からWABには合流しましたので、まだいろいろなところには行けてないんですが、パースの印象は、まず世界で2番目に小さなモナコという国から来たので、ゆったりとしたスペースのある良い所だなと思いました。それとモナコに比べて、いろいろと揃っているのも良いですね。例えば、日本食レストランも2、3件しかモナコにはなかったですが、パースにはいっぱいありますし、住みやすい所だなとすぐに思いました。

 

 

—バレエにおける自身の特徴は何だと考えていますか?

4年間、モナコのアカデミーでバレエをしっかり学んできたので、基礎が身に着いたかたちで踊れるということでしょうか。基礎は今でも大切にしています。それと、クラシックバレエだけではなく、コンテンポラリーも踊れて、自分で振り付けした経験もあるので、その点で自分を表現できるのが特徴かもしれませんね。

 

—近い将来、遠い将来の目標を教えて下さい。

今はコール・ド・バレエ(※)なので、こんなことを言うのはまだ早いのかもしれませんが、1年後、2年後には昇格していたいと思っています。遠い将来は、日本に帰国してコンテンポラリーバレエの振り付けをしたいと思っています。日本ではまだバレエと言えばクラシックバレエを思い浮かべる人が多いと思いますが、コンテンポラリーバレエをもっと知ってもらえるような活動もしてみたいと思っています。
※階級名の一つ。最下級に属す。

 

—最後に本誌読者、特に日本人の方へ一言頂けますか?

プロ1年目ですが、ぜひ劇場に足を運んで頂き、公演を観に来て頂ければと思います。宜しくお願い致します。

 

武藤 圭吾(むとうけいご)

 

 
大阪生まれの大阪育ち。母親が経営、指導するチエバレエスクールでバレエを始め、田中バレエアートでも稽古を重ね、スカラーシップを利用して2014年からモナコ王立アカデミープリンセスグレースに留学。2019年4月にWAB入団。バレエコンクールでの主な受賞歴は、2013年に『OsakaPrix 第14回 クラシックバレエ・コンクール(ジュニア男性2部)』で第2位、2013年に『2014年ユース・アメリカ・グランプリ・ジュニアクラシック部門(Youth America Grand Prix/YAGP)日本予選』でトップ6に入賞し、モナコ王立アカデミープリンセスグレースからスカラーシップを獲得。また、2014年『Japan Ballet Competition 名古屋 2014(クラシックバレエJunior男性部門)』で1位。

 


【編集後記】 本誌vol.253(2019年2月号)にWABに入団したプロ1年目のダンサー、野黒美茉夢さんにもインタビューし、記事を掲載した(記事はウェブ内にも掲載:theperthexpress.com.au)。今回は野黒美さんに続き、プロ初契約を交わした武藤さんを紹介したが、どの世界でもプロとして身を立てるには想像を絶する厳しい競争に勝ち抜かなければならない。日本人にとって長い歴史の中の文化背景にない芸術としてのバレエで、ヨーロッパ文化を継承するオーストラリアのバレエ団で受け入れられるのは同じく容易なことではない。一般的には、バレエ団の練習生や研修生を経て、更にその中からもプロになるのはほんの一握り。しかし、アカデミーを卒業してプロ契約に直結した武藤さんは、野黒美さんの時にも記したが、まさに夢を実現させたひとりなのだろう。そして、今回でWABにとっては4人目の日本人プロダンサーとの契約となる。30人前後のプロダンサーに対して日本人が4人も占めるということは、世界における日本人バレエダンサーのクオリティが証明されてきているということを明言せずにはいられない。


 

西オーストラリア・バレエ団(West Australian Ballet)

 

©West Australian Ballet
 
西オーストラリア州・パースに拠点を置き、1952年に設立され、今年で67周年目を迎えた国内では最古のバレエ団。公演や国内外のツアー以外にも、ワークショップや育成プログラムの提供など地域活動も行う。芸術監督はベルギー人のAurelien Scannella。

 

2019年公演スケジュール

 

©West Australian Ballet / Ballet at the Quarry – In Synch Photo by Liz Looker
 

La Bayadère The Temple Dancer
開催期間:5月9日~5月25日
会場:His Majesty’s Theatre

Genesis
開催期間:6月27日~7月6日
会場:West Australian Ballet Centre

Giselle
開催期間:9月13日~9月28日
会場:His Majesty’s Theatre

ALICE(in wonderland)
開催期間:11月21日~12月15日
会場:His Majesty’s Theatre

チケットの購入はticketmasterまたはWABのウェブサイトからお求め頂けます。







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