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激闘の末の結果は?!グローリーの2020-21シーズンは残り3試合。



<グローリーの背番号8番、太田宏介にとってAリーグでは最多観客動員数の前でのプレーだった。Image from Kayo Sports Screenshot>
 
アウェイ3連戦。2020-21のレギュラーシーズンはこの3試合で終わる。その3連戦の最初の試合が、Wellington Phoenix。グローリーにとっては力関係だけではなく、難敵なアウェイゲームとなった。
 

<Aリーグを知る記者の視点 A League Football Journalist’s Point Of View>
今シーズン(A League 2020-21 Season)から、Aリーグを知る記者の視点から更に詳しくパースグローリーの試合についてお届けする。

 

2020-21シーズンAリーグ パースグローリー試合結果
Matchweek 23(2021年5月30日)
Wellington Phoenix 2 – 2 Perth Glory 会場:Eden Park

 
 
Wellington Phoenixは、今シーズンはコロナ禍だったため本拠地のニュージーランドではなく、オーストラリアのNSW州に拠点を置いて活動をしていた。しかし、オーストラリアとニュージーランド間の国境が開き、5月22日にPhoenixは地元ニュージーランドのウェリントンで約14ヵ月ぶりに試合を行った。その試合になんと24,105人もの観客が詰めかけ、内容も完勝。そして、今回の試合はニュージーランド復帰の2試合目となり、オークランドで行われた。当然、グローリーにとっては完璧アウェイ状態で臨む試合となる。

そして、9試合負けなしの好調を維持していたPhoenixは、10試合連続無敗といったクラブ記録のかかった試合でもあった。また、ファイナルシリーズ進出のため試合数がグローリー(32ポイントで8位)より一試合多いPhoenix(34ポイントで7位)は、この試合を勝利して勝ち点でグローリーを引き離し、次のシーズン最終試合(アウェイかつ上位チームのMacarthur FCと6月4日)では優位な気持ちで臨みたいといった狙いもあった。

しかし、それ以上にこの両チームの一戦は、5,000km以上の移動が必要な「最も遠い地での戦い/The Distance Derby」と呼ばれ、この移動がグローリーに大きな壁となって立ちはだかっていた。

今回、移動は2日かけた。27日の木曜日の午前中はパースで練習をこなし、午後の飛行機でシドニーに移動。シドニーで一泊して、翌日の28日の金曜日はシドニーからオークランドまで一日かけてさらに移動した。そして、土曜日に練習を行い、この日曜日の試合に備えた。グローリーにとっても、2020-21シーズンを締め括る大事な3連戦であるため、今回はいつも以上に余裕をもった日程ではあったが、この移動はアスリートにとっては残酷である。

試合後、グローリー不動の左SB、背番号8番の太田宏介は「パースからだったので、オークランドは寒く感じましたね。移動も2日かかっていますし、体調管理にはかなり気を遣いました」と話していた。

実は、5月23日のホーム8連戦後、太田は体調を崩していた。26日の練習には参加せず、このオークランド遠征出発のパース空港での検温で、もし体温が高いとなった時、コロナウィルスの熱ではないという証明を見せるためにも、コロナ検査を受けていた。幸いにも空港では熱はなく、飛行機に搭乗でき、シドニー、オークランドへの移動は完結できた。しかし、試合当日も太田の体調は万全ではなかった。
 

<地元チーム“Wellington Phoenix”の帰還に多くのファンがスタジアムに詰めかけ、声援を送った。Image from Kayo Sports Screenshot>
 
試合は序盤から思わぬ展開となる。

開始1分。右サイドからのFK。グランダーのボールは太田の前に。そこにPhoenixの背番号6番、Tim Payneが太田の前に体を入れる。太田とPayneはそのままもつれるように倒れる。主審のホイッスルが高々と鳴った。直ぐさま太田は両手を広げ、何か一言を発した模様が映像で映し出された。相手チームは喜びで輪となる。グローリーのキャプテン、背番号17番のDiego Castroは主審に必要に抗議する。

判定はVARに委ねられた。VAR Contral Roomからの指示では決めかねたのか、主審がピッチ外に設置されたモニターで太田とPayneとの接触を確認した。かなりの時間が流れた。そして、ピッチに戻った主審はPKではないと最終判定を下した。

その時の様子を太田は「実は、相手の選手がニアに走り込むとは予想していませんでした。ただ、自分が反則を犯しているとは思っていなかったので、もしPKの判定となったら、あの(ホームチームが優位という)状況ではやむを得なかったかもしれませんね」と冷静にその時のことを振り返った。
 

<FKから流れて来たボールにPA内で反応するWellington Phoenixの背番号6番、Tim Payne(写真右)と太田(写真右から3番目)。Image from Kayo Sports Screenshot>


<Payne(写真右)と太田(写真右から2番目)との接触はほとんどなかったように見えた。Image from Kayo Sports Screenshot>
 
試合は前半20分過ぎまで一進一退で展開する。そして、25分にPhoenixの背番号17番、FWのTomer Hemedが低い位置まで下がってボールを受け、味方DFとパスを交わす。そのHemedのマークに付いていた背番号5番、グローリーDFのJonathan Aspropotamitisが一度引きずり出されるも、すぐさまバックラインに戻る。ただ、戻る際にHemedのマークが完全に外れた。その隙にサイドからのパスをHemedはゴール中央でフリーで受けて、右足でシュート。Phoenixが先制に成功した。

チームの帰国を待っていた大観衆はグローリーにとっていつも以上の重圧となり、グローリーは劣勢に追い込まれる。ただ、前半は失点1で凌ぎ、迎えた56分(後半11分)に選手交代でピッチに入った背番号9番のBruno Fornaroliがその5分後、ストライカーの仕事を果たす。Castroからのパスを相手GKの動きを見つつも、左足で逆サイドに流し込んだ。グローリーが追い付いた。

そして、さらに74分(後半29分)、22,233人の観客が凍り付いた。攻撃の始まりは太田だった。セカンドボールをキープした太田が前線のFornaroliにパスを出す。その後、さらにパスをもらうため太田がライン際を攻め上がろうとしたことで相手DFの目が太田のいるサイドに振られる。その動きを見たFornaroliが反対の、中央の背番号19番、Callum Timminsにパス。ボールを受けたTimminsは前を向くなり、右足を振り抜いた。ゴールまでは約30m。芯を食った強いボールはそのまま矢で射抜くようにネットに突き刺さった。今シーズンにAリーグデビューを果たした21歳のTimminsにとって嬉しい初ゴールとなった。
 

<この日もボランチとして積極的に前から相手チームにプレッシャーをかけていた背番号19番のCallum Timmins。Aリーグ初ゴールを記録。Image from Kayo Sports Screenshot>


<Wellington Phoenixの背番号20番、GKのOliver Sailの手をかすめ、ボールはゴール右上の隅に吸い込まれていった。Image from Kayo Sports Screenshot>
 
試合残り時間は15分足らず。その15分を凌げば、グローリーにとってはしてやったりの勝ち点3を得ることになる。ただ、勝利の女神はそう簡単には微笑まなかった。80分(後半35分)に途中出場のPhoenixの背番号11番、Jaushua Sotirioに同点打を喰らう。そして、大観衆が後押しするPhoenixに絶好の機会が訪れる。

手元の時計では89分(後半44分)。試合終了まで残り1分。

東京オリンピックの豪州代表メンバー候補となっている背番号18番、Nicholas D’AgostinoがPA内で相手選手を倒してしまった。グローリーにとっては無情のPK判定。試合開始1分の太田のチャージは反則ではなかったが、D’Agostinoのチャージは反則となってしまった。

キッカーは今シーズン、Phoenix不敗の原動力となっている背番号10番、メキシコ人プレーヤーのUlises Dávila。この日は負傷明けということもあって途中出場。短い助走から左足でコースを突く。と同時に、グローリーのGKで背番号33番、Aリーグのクリーンシート記録をもつLiam Reddyが左に飛ぶ。その読みがぴったり当たる。土壇場でのPhoenixの勝ち越しを防いだ。九死一生を得るスーパーセーブだった。
 

<5月9日のMelbourne Victory戦でもPKを止めていた、背番号33番のGK、Liam Reddy。古巣相手に大きな仕事をした。Image from Kayo Sports Screenshot>
 
ロスタイムは5分、実質7分だった。その間も怒涛の攻めを続けるPhoenixだったが、太田を含めたグローリーDF陣をはじめとした全選手でゴールマウスを守り切り、試合は終了した。

パースとは4時間の時差。午後9時を過ぎていただろう。試合終了後、電話取材で太田は「素晴らしいスタジアムと雰囲気の中での試合でした。個人的には(オーストラリアに来て)ベスト3に入る試合だったと思います。(パフォーマンスは)守備に回る時間が多かったですが、ハーフタイムと試合後もコーチ陣からは支持されたので良かったのかなと思います」と試合を振り返り、また味方GKのReddyがPKを阻止したシーンについては「あれは大きかった。負けると引き分けるのでは大きく違うので、次につながりましたね」と触れた。

また、初めての国外移動については「とにかく遠いです!電話もオーストラリアで使ているのが利用できるのかと思ったら、できないんですね!そりゃ、違う国ですもんね」と笑いながら話してくれた。
 

<渾身の死守でグローリーゴールを守った太田(左)と背番号29番のDarryl Lachmanの両ディフェンダー。Image from Kayo Sports Screenshot>
 

【試合結果】
Wellington Phoenix 2 – 2 Perth Glory

得点:
<Wellington Phoenix>
Tomer Hemed(25分)
Jaushua Sotirio(80分)

<Perth Glory>
Bruno Fornaroli(61分)
Callum Timmins(74分)

 
文:今城康雄(いまなりやすお)。パースの日本語メディア「The Perth Express」の代表兼、編集長。2005年のAリーグの開幕以来、リーグ公認のメディアとなっている「The Perth Express」のジャーナリストとしても、パースグローリーのホームゲームはほぼ全試合、記者席より取材を重ねてきた。2020年よりパースグローリー日本地区担当マネージャー兼任。
 
 
【参考】
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関連(外部リンク):太田宏介オフィシャルインスタグラム
関連(外部リンク):太田宏介オフィシャルブログ
関連(外部リンク):太田宏介オフィシャルツイッター







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