オーストラリア国内では、ワクチン接種に関する優先順位が設けられていますが、5月3日よりその順位が変更しました。
新型コロナウイルスの感染が急拡大しているインドを受けて、オーストラリア政府は5月1日、インドからの入国を3日から禁止すると発表しました。違反した場合は、最大5年の禁錮刑または6万6,000豪ドルの罰金が科せられるといった厳しいものでした。オーストラリア主要メディアでは「入国違反でオーストラリア国民が有罪となる措置としては初めて」とし、インドに滞在している推定約9,000人の自国民の帰国を事実上、阻止することとなりました。この禁止措置を取った背景には、インドでのウイルス感染者数が累計1,900万人を超え、20万人以上が死亡、前週の1日あたり30万人以上の新規感染者が報告されているといった現状があるからでしょう(BBC Australia調べ。5月2日)。
しかし、インドは今年1月にはワクチン接種を大々的に開始して、感染者は激減していたのにも関わらずこの状況に陥ってしまったのには、深刻なワクチン供給不足が起因しているようです。オーストラリア国内においても政府が設定したワクチン接種に関する目標には大分遅れているのが実情です。
さて、そのオーストラリア国内におけるワクチンに関して5月3日(月曜日)から『優先接種グループ』がグループ2a(フレーズ2a)に変わり、そこに該当する人への接種が始まりました。当コーナー【パースの医療現場から】では前回、「COVID-19予防接種(新型コロナワクチン接種)について」で、日本語で診察ができる日本語医療センターのマネージャー、千綿真美さんにお話を伺いましたが、今回も「COVID-19予防接種の最新情報」についてお聞きしました。
関連記事:【パースの医療現場から】COVID-19予防接種(新型コロナワクチン接種)については、こちらから。
『優先接種グループ』が、グループ2a(フレーズ2a)になったということですが、具体的にどのような人たちが接種できるようになったのですか?
千綿さん:大きく変わったことは、50歳以上の方が接種できるようになったことです。
スコット・モリソン豪首相が「50歳未満の人はアストラゼネカ(AstraZeneca)製ではなくファイザー(Pfizer)製のワクチンを推奨する」と4月13日の時点で話をしていましたが、今回の該当者にはどちらのワクチンが接種されるのですか?
千綿さん:50歳以上となるので、アストラゼネカ社のワクチンの接種となります。
どこで接種が可能となりますか?
千綿さん:5月3日からは呼吸器系クリニックなどの指定されたクリニック、またGP(一般開業医/General Practitioner)では5月17日から受けられます。当日本語医療センターでは、50歳以上の方の予約が取れるのは6月に入ってからになりそうです。
関連記事:「【新型コロナウイルス関連】アストラゼネカ製ワクチン接種」は、こちらから。
ただ、50歳以上でもメディケア(Medicare/オーストラリアの国民保険)の有無で接種の方法は変わりますか?
千綿さん:はい、変わります。まず、メディケアをお持ちの方の場合ですが、かかりつけのGPへお問い合わせ下さい。もしくは、西オーストラリア州政府指定の呼吸器系クリニックにて接種の予約を取ることができます。
州政府指定の呼吸器系クリニックへ予約をとる場合はどのようにしたらいいですか?
千綿さん:医師やクリニックと患者をエンゲージメントしてくれるサイトHotDoc(https://www.hotdoc.com.au/)内の「Find a COVID-19 vaccine appointment near you」にて、接種可能なクリニックのリストがアップされています。当サイトに登録した上で、予約を取ることができます。接種当日は、顔写真付きの身分証明書とメディケアカードが必要となります。
では、メディケアを持たない方は?
千綿さん:メディケアを持たない方は、GPでの接種はできません。お話した州政府指定の呼吸器系クリニックのみとなります。HotDocなどから予約、接種することになります。ちなみに、50歳未満の方で、職業や健康上の問題などの理由で優先接種を希望する方は、その旨が記載された医師からの証明書を持参することになります。
メディケアを持たない方の接種の際、「IHI」が必要になると聞きましたが、「IHI」とは何ですか?
千綿さん:「IHI」とは、Individual Healthcare Identifierの頭文字をとったもので、一般的には「個人ヘルスケア識別番号」と言われています。メディケアを持つ、つまり市民権や永住権保持者の方の健康に関する情報はメディケア・ナンバーで管理されますが、メディケアを持たない、いわゆる外国人に対しての健康に関する情報管理は、このIHIで行われています。
では、その「IHI」がなければワクチンが受けられないのですか?
千綿さん:「IHI」を取得しなくてもワクチン接種は可能です。ただ取得することで、COVID-19予防接種の記録が政府のデータベースに登録されることになります。オーストラリア政府は取得することを勧めております。
参考:「【Individual Healthcare Identifier】取得申し込みフォーム」は、こちらから。
今回は、『優先接種グループ』が変わったことを受け、お話を伺いましたが、新型コロナウイルスのワクチンについては国内だけでなく世界中で議論がされていますね。
千綿さん:そうですね。今回のこの情報についても、あくまでも接種希望者のための情報とお考え頂ければと思います。
最後に、パースでは4月24日から3日間のロックダウン措置が急きょ敷かれるなどウイルスを取り巻く状況はまだまだ日々変化し、情報も交錯する時がありますが、何かアドバイスを頂けますでしょうか?
千綿さん:今回、お話させて頂いた内容は私が関係各所に問い合わせて確認したものです。実際、医療現場は未だに混乱気味ですので、情報が誤ったり、変更したりすることがあるかもしれません。なので、最新かつ正しい情報を得れるよう、個人でも積極的な情報収集を試みて下さい。当日本語医療センターからもお届けできるよう致します。
<5月3日にマーク・マガウワン(Mark McGowan)西豪州首相とロジャー・クック(Roger Cook)西豪州保健省大臣がワクチン接種を受ける>
【関連情報】
Australian Government Department of Health(オーストラリア保健省)のCOVID-19ワクチンについて(https://www.health.gov.au/node/18257)
新型コロナワクチン接種優先度のチェックはこちらのサイトから確認できます(https://covid-vaccine.healthdirect.gov.au/eligibility)
Government of Western Australia(西オーストラリア州政府)のCOVID-19ワクチン接種について(https://www.wa.gov.au/organisation/covid-communications/covid-19-coronavirus-vaccines)と(https://rollup.wa.gov.au)
【関連記事】
関連記事:【パースの医療現場から】COVID-19予防接種(新型コロナワクチン接種)について
関連記事:【パースの医療現場から】開花季節の“春”だから花粉が気になる。オーストラリアの花粉症について。
関連記事:【新型コロナウイルス関連】オーストラリアで健康診断を受けよう
関連記事:【新型コロナウイルス関連】「パースの医療現場からの声」
関連記事:【【パースエクスプレス・マガジン】「今月のなやみちゃん どうなさいましたか?『今月も調子が悪いんです』」
関連記事:【パースエクスプレス・マガジン】「日本とオーストラリアのメディカルチェック」
関連記事:【パースエクスプレス・マガジン】「お元気ですか? オーストラリアの医療事情」
関連記事:【パースエクスプレス・マガジン】特集「体の具合がおかしい」と感じたら パースで はじめての病院」
関連記事:【パースエクスプレス・マガジン】特集「オーストラリアの医療」
千綿 真美さん
日本語医療センターのマネージャーとして、診察時の日本語への通訳やその他医療手続きの代行も行ってくれる。
【情報提供】
〈日本語医療センター〉日本語でサポートが受けられ、海外旅行傷害保険キャッシュレスサービスも提供する。
日本語フリーダイヤル(予約) 1800-777-313
住所:Level 1, 713 Hay St. Perth WA 6000 (Perth Medical Centre内)
電話:08 9486 4733
ファックス:08 9321 4778
ウェブサイト:www.nihongoiryocentre.com.au