2018年3月に日本の高校を卒業し、4月にアメリカで開催されたバレエコンクール『2018年ユース・アメリカ・グランプリ(Youth America Grand Prix/YAGP)』の“ニューヨーク・ファイナル”に進出、6月に当コンクールで獲得したインターンシップにて西オーストラリア・バレエ団(West Australia Ballet/WAB)を訪れた野黒美茉夢(のぐろみまゆめ)さん。その際、WABのプロのダンサーたちからの特別指導やコーチングを受け、またWABが来賓や関係者を招待してダンス・デモンストレーションを披露した。そのインターンシップはわずか約1週間だったが、その時に高い評価を得て、この度WABとプロ契約を交わすことになった野黒美さん。今後の抱負も含めて話を伺った。
写真提供・取材協力: 西オーストラリア・バレエ団(West Australia Ballet/WAB)
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—今回のプロ契約までの経緯を教えて頂けますか?
昨年6月のWABでのインターンシップの時、最終日前日にWABのAurelien Scannella芸術監督から直接“契約を結びたい”と言って頂きました。3か月後の9月からは、すでに米国シカゴのジョフリー・バレエ団(Joffrey Ballet)のジョフリー・アカデミーオブダンス(Joffrey Academy of Dance)のTrainee Programに参加することは決めていたので、“2019年の1月からでかまわない。シカゴには英語の勉強を含めて行くといいでしょう”と言って頂き、12月29日までシカゴにいて、そのままパースに来ました。12月の31日でした。
6月には約1週間のパース滞在でしたが、今回、改めてパースの印象は?
マイナス1度のシカゴから来たので、最初にパースに降り立った時は“暑い!”でした(笑)。あとは、自然が広がり、お花や緑が至る所にあって、すぐに目に入るのがいいですね。パースの中心部以外は建物が低いので、空も大きく見え、本当にきれいですよね。
—ダンスにおいてご自分の特徴は何ですか?
音感、振りの覚えや理解、対応力の速さだと思っています。音感について、音に合わせて踊る、踊れるダンサーをもともと目指していて、気を付けているからかもしれません。“ダンスだけできても駄目、大成できているダンサーは頭も良い”と日本のバレエ団の先生に言い聞かされてきましたので、高校受験、高校時代も頑張って勉強しました。覚える暗記力や、理解して対応する力は勉強を一生懸命やってきたからというのもあるかもしれませんね。
—このWABでは、ご自身にとって何を目標とされていますか?
プロの毎日は基本、「クラス」と「リハーサル」が主なスケジュールとなります。クラスでは基礎をやって、ウォームアップの時間と考えられています。リハーサルは公演のためのリハーサルです。プロなので、公演で踊ることがメインになるのでリハーサルに重きが置かれがちですが、クラスでのその基礎やウォームアップもしっかり手を抜かず、こなせるダンサーを目指しています。基礎をおろそかにしないで、レベルアップを計れれればと思っています。
—劇場に来てくれるお客さんに自分の何をアピールしていきたいですか?
真ん中に踊っているわけではないけど、印象に残るようなダンスでアピールできればと思っています。正直、私のようなアジア人は西欧人と骨格が違うので、彼らのように手足が長かったり顔が小さかったりというダンサーとしてのメリットは少ないかもしれません。でも、日本人のダンサーは技術やテクニックでカバーしてきていますし、自分もそうしてアピールができればと思っています。ただ、日本人で自分の後輩たちは手足が長い子も多くなってきていますし、アジア人にとってのそのデメリットはこれからは少しづつなくなっていくかもしれませんね。
—今はプロ一年生ですが、更なる目標は?
小さいことからの夢だった、プリンシパル(※)になることです。
※バレエ団のトップの階級にいるダンサーのこと。
—最後に、読者に一言頂けますか?
粗削りで、分からないことだらけのダンサーですが、プロという自覚をもって頑張っていきたいと思っています。是非、公演を観に来てください。
神戸生まれの名古屋育ち。川口節子バレエ団にて3歳からクラシックバレエを習い始める。多くの演目でソリストとして踊り、中でも「ドン・キホーテ」のキトリや「くるみ割り人形」のクララを演じる。また、数々のコンクールで賞を受賞する中、近年では2018年4月にアメリカで開催された『2018年ユース・アメリカ・グランプリ(Youth America Grand Prix/YAGP)』の“ニューヨーク・ファイナル”に進出してスカラーシップを獲得している。また、2018年8月には『平成30年度全日本バレエ・コンクール』のジュニアAの部、女子部門で第1位に輝いている。
【編集後記】 日本でのバレエの世界においてはなかなかプロのダンサーとして身を立てられる環境が整っていないが、かといって海外では更に競争が激化する中、早々にそのプロを勝ち取った野黒美さん。通常、プロへの道は練習生、研修生などを経て、またその先の狭き門を潜り抜けてプロがあるといった非常に険しい道のりである。実際、野黒美さんも昨年のパースのインターンシップを受ける前までは、まずは練習生や研修生としてスクールに通い、プロを目指していたと思う、と話す。まさに「Dream Comes True」をパースで実現した野黒美さんだが、話を伺っているとそれまでの努力や経験など計り知れないものがあったからこそ今があり、決して今回のプロ契約はミラクルではなかったんだろうとインタビューの中の言葉の端々から感じられた。
©West Australian Ballet
西オーストラリア州・パースに拠点を置き、1952年に設立され、今年で67周年目を迎えた国内では最古のバレエ団。公演や国内外のツアー以外にも、ワークショップや育成プログラムの提供など地域活動も行う。芸術監督はベルギー人のAurelien Scannella。
©West Australian Ballet / Ballet at the Quarry – In Synch Photo by Liz Looker
In-Synch: Ballet at the Quarry
開催期間:2月8日~3月2日
会場:Quarry Amphitheatr
La Bayadère The Temple Dancer
開催期間:5月9日~5月25日
会場:His Majesty’s Theatre
Genesis
開催期間:6月27日~7月6日
会場:West Australian Ballet Centre
Giselle
開催期間:9月13日~9月28日
会場:His Majesty’s Theatre
ALICE(in wonderland)
開催期間:11月21日~12月15日
会場:His Majesty’s Theatre
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