[第2節] 勝負へのこだわり
最初に断っておくが、本新連載ではパースにいる石田博行ではなく、サッカー選手の石田博行にスポットをあてる。
午後6時を過ぎた頃からポツポツと降り始めた雨が、乾いたアスファルトの上に模様を描き始めていった。 2005年5月11日、FIFA世界クラブ選手権豪州予選準決勝、パース・グローリーFC対シドニーFCの試合が、グローリーの本拠地Members Equity Stadiumで行われた。記者席では携帯電話で会社とやり取りする者やラップトップ・コンピューターのキーを叩く者たちが慌しく、今から始まる一戦への準備を進めていた。そしてこの試合は、オセアニア地区予選の事実上の決勝戦であり、この戦いの勝者が今後のオセアニアのサッカー界をリードしていくであろうことは誰もが知っていた。 午後7時、雨脚が強くなる中、シドニーのメンバーがウォーミングアップを始めた。そして遅れて5分、グローリーのメンバーがグラウンドに姿を現した。観客は一斉に声を上げる。整列してジョギングする列の先頭には、ただ1人長袖のジャージを着て、チームを引っ張る石田博行の姿があった。 |
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