「西オーストラリアに根付いた農業者でありたい」
西オーストラリアでミニトマト農園を経営する、大熊農場代表の大熊栄久さん。2005年にパースに移り住み、日本のミニトマトを栽培し、市場では高値で売られているトップブランドのミニトマトを生産している。2018年には、オーストラリアでは最初となるイタリア製の選別機を、来年2019年には日本製のパッキングマシーンも導入予定だ。自社の商品の品質向上、そしてその先に見る大熊さんの農業者としてのビジョンについて前話に引き続き伺った。
今月の人
大熊 栄久(おおくま よしひさ)さん
日本では先祖代々農家の家系で育ち、トマトの生産者として農業を営んできた。2005年に一部業務を従業員に任せ、パースに移住。西オーストラリアでのトマト生産に乗り出す。現在、パース(Baldivis)とカナーボン(パースから北約900km)、日本の3つの農場を経営しながら自らも栽培から販売までマネージメントする。
パースでの農業経営で難しかった点は?
「日本とオーストラリアでは、消費者の好みが違うという点です。日本では甘くて新鮮で、かつジューシーさが求められますが、ここでは実がしっかりとしていてある程度硬くなければなりません。日本で売れているものをそのまま栽培しても、ここでは売れないこともあります」
逆にそこまで難しくなかったことは?
「日本と比べて湿気や降雨量が少ないなど気候が優れているため、ミニトマトの栽培管理が容易だったことです」
選別機導入のきっかけは?
「まずは、人件費削減のためです。ですが、それ以上に、パッキング精度の向上です。人の目視の選別では限界がありますので。その点、選別機によって精度の高い分別を可能にしました。また、その選別でパッキングが誰でもできるようになり、研修にかかる時間も削減されましたね」
近い将来、パッキング機の導入もお考えかと?
「会社として、今は業績向上を最重要とし、大事な投資だと考えています」
農業の将来のかたちとは?
「西オーストラリアは東側と比べて、人口が少なく気候も違います。しかし、西オーストラリアの広大で未開拓の土地は、私の開拓者魂を揺さぶりますね。広大な農地を見ると可能性が広がります。その西オーストラリアで日本人の農業者がいるといったことは聞いたことがありませんね。ですから、英語に不安があるといった日本人ワーキングホリデーメーカーのような方々の手助けになるような農場も経営していきたいと考えています。そして、それが私の代で終わるのではなく、ずっと大熊農場は継続していってほしいですし、例えば、大熊農場で働いたスタッフが日本に帰国し、その子どもたちがまた大熊農場で働くといったことになるように、西オーストラリアに根付いた農業者でありたいと思っています」
前号(Vol.250)の当コーナーでは、大熊さんのなぜ西オーストラリアで、どのようにして、そして農業にかける想いなどを伺いました。そして今号では、その想いをビジネスにつなげた大熊さんについてお届けしました。
特集「西オーストラリアの日本のミニトマトのお話」と合わせて、「徒然パースの生活日誌 スピンオフ編(後篇)」を前号(Vol.250)と今号の連載でお届けしました。