日本とは社会の習慣やシステムが異なり、また言葉の違うオーストラリア。そこで起こった法的トラブル。パースの弁護士事務所の弁護士やプラクティス・マネージャーが毎月、ケーススタディで問題解決のアドバイスを提供する。
ケーススタディ 06
不動産取引のトラブルについて
「オーストラリアの不動産購入を検討しています。ただ、法律的なことが全く分からないのでアドバイスを頂けますか?」
「日本語で書かれているのにそれが英語で書かれていれば、尚のこと理解し難い売買契書類ですが、売主側が提出してきた売買契書類に言われた通りに署名して、その後トラブルが発生することは少なくありません。署名済みの売買契約書を解約できず、納得の行かないまま売買契約が終了したという話も耳にします。
オーストラリアでは一般的に物件を選定し、購入を決めた後、弁護士や不動産取引エージェントが契約から決済を遂行します。購入を決める際、通常は売主側が依頼した不動産業者から出された契約書に基づいて合意が行われます。多くの人は購入価格のみを気にして、他の細かな契約内容を見落としがちです。不動産業者は売主に雇われているため、契約書は売主の希望が全て盛り込んだものとなっている場合が多く、購入者に一刻も早く署名させたいと思っていることをまずは理解した方が良さそうです。購入者はその契約書の内容を十分理解した上で署名することが、後のトラブル回避に繋がります。
契約内容を理解していない方、または不安な方は署名をする前に一旦契約書を預かり、弁護士へ購入者に不利な事項があれば指摘してもらい、購入者の希望を入れた内容に契約書を修正、加筆してもらいましょう。場合によっては売主と購入者の間を修正された契約書が行ったり来たりします。
実際、最初に注意するべき点は、現在、保持しているビザの種類によって、購入できる物件や条件が決められているということです。さらに重要なのが購入者の名前、手付金の金額と借り入れの有無、引き渡し日などです。購入の意思をみせると、不動産会社が手慣れた手つきで契約書を作成します。口頭で購入者の名前や現住所を聞かれ、書き込まれます。名前のスペルや、購入者が誰であるのかを確認してください。契約書に署名した後の購入者の変更はとても複雑ですし、一旦不動産取引が行われると、家族間であっても名義変更には印紙税がかかります。手付金も万が一の時のため、必要最低限が望ましいです。引き渡し日は、売主の都合が考慮されますが、購入者側の譲れない都合がある時はその希望も伝えてみるべきです。
また、不動産売買契約書は条件なしのものと、条件付きのものがあります。条件なしのものは契約書に署名した途端、何が起ころうと購入の必要があります。条件付きの一般的なものは、指定の日までにローンの審査が通らなかったら契約が無効になる条件や、今住んでいる家が売れた時に契約が完了する条件などがあります。無条件や条件を満たした後での契約破棄には、多大な違約金や売主への賠償金等が発生するので要注意です。
アパートやユニットなどの集合住宅の場合は、共益費や管理費の金額はもちろん、ペットの飼育、内装などの改装の規制、全体としての大改築や修理の予定、現在住民が抱えている訴訟の有無などにも注意する必要があります。建築会社と購入者の裁判はとても多いのが実情ですが、裁判が長引くと、裁判費用の個人負担も大きくなります。集合住宅ゆえ、自分だけ払わないということが許されません。購入前に、管理組合の議事録や年度末決算、予算等の会計書類を調べることも可能です。
最後に、購入者側の不動産取引の大まかな流れをご紹介します。
購入物件決定→不動産取引業者任命→契約書内容確認→契約書に署名(契約日、頭金支払。不動産会社等の信託口座へ)→ローンの審査(ローンを組む場合)→契約成立→保険に加入→調査費用、諸費用、印紙税、見積もり決済額の支払い→購入者または不動産会社による不動産最終チェックで欠陥がある場合、売主側は欠陥修理実施→決済→鍵の引渡し
不動産購入は人生の中でも大きな買い物です。住む以前の契約時点でのトラブルは是非とも避けましょう」
私たちがお応えします。
パースの弁護士事務所『Equitas Lawyers』の弁護士や弁護士事務所プラクティス・マネージャー、『Equitas Migration』の移民法コンサルタント。
『Equitas Lawyers』『Equitas Migration』
各分野の専門の弁護士が所属するパースの弁護士事務所。日本人が通訳として窓口になり、メールや電話も日本語で対応してくれる。また、ビザに関してもコンサルタントが日本語で対応可。
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