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【パースエクスプレス・マガジン】第53回「AリーグとJリーグの野望」

先日開幕した2018‐19シーズンのAリーグ、パースグローリーが開幕ダッシュに成功し、順位表のトップにいます!本誌お膝元のおらが町のクラブがリーグのトップにいてくれる…、そちらパースの盛り上がり具合が想像できます。

さて、こちら日本のJリーグは先日シーズンが終了し、J1とJ2入れ替え戦を残すのみとなり(本誌発行時には結果が出ている思いますが)、既に来シーズンに向けてのストーブリーグがスタートしています。

オーストラリアでも既に報道されていると思いますが、J1リーグ所属のヴィッセル神戸が、昨年の元ドイツ代表のルーカス・ポドルスキー選手、今季途中の元スペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手に続き、来シーズンから元スペイン代表のダヴィド・ヴィジャ選手の獲得の発表をしました(ヴィジャ選手は、2014年にAリーグのMelbourne City FCにもゲストプレーヤーとしてプレーしていますね)。新たな名手来訪は、日本にてインパクトのあるニュースとして取り上げられています。

本誌連載第20回「オーストラリアと日本のビッグクラブ」にて筆者は、Jリーグにて将来的にビッグクラブと呼べそうなのは浦和レッズ、ガンバ大阪、名古屋グランパスと記載しました。ヴィッセル神戸は該当しないと決めつけていましたが、今や筆者の予想の斜め上を超えていっています。

筆者が定義するビッグクラブの条件として「大都市圏を本拠地とする」、「経済的基盤が大きい」、「リーグやその他大会での実績がずば抜けている」ことを挙げましたが、ヴィッセル神戸は上記3つのうち2つの条件は満たしていると思います。神戸市の人口は約150万人、政令指定都市として国際的にも名の知れている都市です。経済的基盤に関してもオーナー企業の財力は国内有数であり、オーナーのクラブに対する野心は並々ならぬものを感じますので、今後もクラブに対する執着は留まることはないでしょう。実績に関しては、プロリーグが始まってから25年経ちますが、未だ目立ったタイトルがないことが唯一足りない条件です。ということで、ヴィッセル神戸はそのタイトルといった条件を除外すれば、世間に与えるインパクトにてビッグクラブの条件を満たしているといえるでしょうね。

来シーズンから外国人枠の改定が行われますが、Jリーグの大きな変更点として注目です。登録できる外国人選手数は無制限に拡がり、出場できる選手数も現在の3から5へ拡がります。欧州メジャーが最早無国籍化しており、外国人枠という麗しき規制が懐かしく感じます。それに追随し、Jリーグがアジアの中で、対欧州のアジアメジャーとなるきっかけになるかもしれません。
そこで今回は筆者が疑問に感じていることでもありますが、あえてこの問題にさせていただきます。

 

Q  オーストラリアでは、Jリーグはどの様な存在になるでしょうか?

 

A  これといった答えのない質問ですが、筆者は「ビジネス相手」といった存在になる、と予想しています。

 
Aリーグは現状、護送船団方式に近い形でクラブが成り立っているので、Jリーグの、特に前出のようなクラブに似たようなAリーグクラブが出現するかというと難しいのかもしれません。実際、今回のヴィッセル神戸の動きも考慮して、Aリーグの選手達が移籍先として選択する機会が増え、クラブもビジネス相手としてますます取引が増えることと思います。

そこで、Aリーグは今後Jリーグを「ビジネス相手」として経営上重要視し、利益を出すための一つの選択肢として駆け引きをする対象になるでしょう。健全経営がウリのAリーグが観客動員を維持しつつ、クラブ強化は自国人選手たちの育成や外国人に関しては列強にてまださほど名の知れていない選手を獲得し活躍させ、Jリーグに“売る”サイクル構築が路線となってくると思います。

Jリーグのヴィッセル神戸というクラブの存在が世間にこれほどインパクトを与える対象になるとは想像していなかった筆者にとって、ここ数ヶ月はJリーグ全体の印象が変わってしまった激動の時期でした。ヴィッセル神戸は外国人枠を含めたルール改定を視野に、J1リーグ中の比類なきビッグクラブとして君臨することに留まらず、世界的なクラブとして君臨したい野望を益々感じるようになりました。

ヴィジャ選手の獲得に続き、日本代表経験のあるMF選手の獲得も間近であり、果ては現バルセロナFCのディフェンダーであるジェラール・ピケ選手の獲得も噂されています。来シーズンは優勝争いをすることが義務付けられ、クラブのライセンスを維持するために益々観客動員と結果を求められることにもなります。

さて、Jリーグは今後ヴィッセル神戸のようなクラブやオーナーの出現が引き続き望まれます。もちろん、Aリーグでも出現を期待したいですね。良くも悪くも、いろいろな意味で引っ掻き回してくれることにより、話題には事欠かないリーグになるのも重要だと思うからです。

今年もご愛読、有難うございました。来年2019年も宜しくお願い致します。

 

 


【筆者:junchang】2010年よりサッカーについての独自の見解を自身のブログ「junchang & the MFF」に掲載。1日2万ページビューを記録することもあり、記事がlivedoor系サッカーサイト「SOCCER JOURNAL(サッカージャーナル ※現在閉鎖中)」に転載されたこともある。 ブログ:http://blog.livedoor.jp/junchang512/

 







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