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【パースエクスプレス・マガジン】第65回「豪日代表はW杯で優勝できるか?」

4年に一度の各国A代表における集大成であるFIFA W杯は姿形を徐々に変えながら規模を拡大してきました。出場レギュレーションも変わり、未出場国に門戸を拡げる動きもあり、今後も肥大し続けるものと思われます。さて昨今、オーストラリアと日本両国にとってW杯は出場し続けなければならない義務のある大会となりました。出場することに意義がある大会から結果を残さねばならない大会になったのです。それでは、ここで恒例の質問です。
 

Q 両国はW杯でいつ優勝できると思いますか?(またも、抽象的ですみません)

 

A 神のみぞ知る質問ですね。まして、欧州大陸と南米大陸以外の国から優勝国が未だ出現していなく、益々予想を難しくしています。

 
 
それでは統計的な視点から見てみましょう。今までにどこの国が優勝をしているのか。W杯は、現在までに21回開催されています。
① 1930年ウルグアイ大会 優勝:ウルグアイ代表(南米)★初優勝
② 1934年イタリア大会 優勝:イタリア代表(欧州)★初優勝
③ 1938年フランス大会 優勝:イタリア代表(欧州)
④ 1950年ブラジル大会 優勝:ウルグアイ代表(南米)
⑤ 1954年スイス大会 優勝:西ドイツ代表(欧州)★初優勝
⑥ 1958年スウェーデン大会 優勝:ブラジル代表(南米)★初優勝
⑦ 1962年チリ大会 優勝:ブラジル代表(南米)
⑧ 1966年イングランド大会 優勝:イングランド代表(欧州)★初優勝
⑨ 1970年メキシコ大会 優勝:ブラジル代表(南米)
⑩ 1974年西ドイツ大会 優勝:西ドイツ代表(欧州)
⑪ 1978年アルゼンチン大会 優勝:アルゼンチン代表(南米)★初優勝
⑫ 1982年スペイン大会 優勝:イタリア代表(欧州)
⑬ 1986年メキシコ大会 優勝:アルゼンチン代表(南米)
⑭ 1990年イタリア大会 優勝:西ドイツ代表(欧州)
⑮ 1994年アメリカ大会 優勝:ブラジル代表(南米)
⑯ 1998年フランス大会 優勝:フランス代表(欧州)★初優勝
⑰ 2002年日本韓国大会 優勝:ブラジル代表(南米)
⑱ 2006年ドイツ大会 優勝:イタリア代表(欧州)
⑲ 2010年南アフリカ大会 優勝:スペイン代表(欧州)★初優勝
⑳ 2014年ブラジル大会 優勝:ドイツ代表(欧州)
㉑ 2018年ロシア大会 優勝:フランス代表(欧州)
 
W杯は見ての通り、欧州大陸と南米大陸からのみ優勝国(8か国が)が出ています。それでは、まず「新たな優勝国」はどのタイミングで現れているでしょうか?
 
戦前のW杯黎明期に優勝している国は除外し、戦後1950年大会以降から参考にすると、まず1954年大会で西ドイツが初優勝、1958年大会でブラジル代表が初優勝、1966年大会でイングランド代表が初優勝、1978年大会でアルゼンチン代表が初優勝、1998年大会でフランス代表が初優勝、2010年大会でスペイン代表が初優勝となっています。注目すべきはある程度、サッカー大国か否かのカテゴリー分けが済んだ1978年以降の大会で、初優勝国が出現するまでに20年の年月を要していることです。1998年にフランスが新たなW杯トロフィー保持者として名乗りを上げてから、さらに12年の月日を重ねてスペイン代表がようやく初優勝を果たしています。フランス代表もスペイン代表も過去大会に出場すれば「優勝候補」の格を備えていましたが、W杯というものは本当に権威主義(と言えば良いのか?)。新たな優勝国を出現させにくい大会なのです。
 
次に、優勝経験のある国の共通点を探してみると、
 
1. サッカーが国技もしくはそれに準ずる存在である。
2. 競争力の激しい自国リーグを持っている。
3. A代表にはスーパースタークラスの人材がいる。分かりやすく言えば、バロンドールやFIFA最優秀選手といった賞を、運さえよければ獲ることが可能な選手が存在する。
 
となっています。
 
新たな優勝国が出現するタイミングですが、近年では1978年大会からだと初優勝国は3か国で、周期にすると13年に一度となります。W杯は4年おきなので4の倍数で13の次は16となるので、ここでは16年周期と定めた場合、2010年大会のスペインが新たな優勝国でしたので、次は2026年頃に新たな優勝国が出現することが予想されます。ただし、その新たな優勝国候補の中には残念ながら豪日両国が入ることは難しいでしょう。実際、まだまだ優勝経験のない強国は多数存在しており、“順番待ち”をしている状態です。また、1~3の条件を豪日両国が満たすまでには相当な時間を要するでしょう。特に、3に関しては欧州メジャーリーグのビッグクラブでエース級の存在になれる選手の台頭が必要です。過去を遡っても惜しい選手はいましたが、バロンドール候補止まりが限界でした。現在の10台後半から20代前半の若手がA代表の中心選手になるのが丁度2026年頃ですが、果たしてそれまでにバロンドールを獲得できる選手が台頭してくるでしょうか。悲観的ですが、難しいと筆者は考えます。
 
また、筆者の直感的な視点では、W杯の規模の拡大が落ち着いた以降、世界の人口分布のバランスが崩れ、よりボーダレス化した時代、両国とも人種のるつぼ化がより進み、更に解放された国になって暫くしてからやっと優勝できるタイミングが訪れるのではなかろうかと思っています。オーストラリアは元々移民を受け入れていた関係でボーダレス化は日本よりも進んでいますが、もっと人口を増加させてサッカーの競技人口を増やさないと3のスーパースタークラスの選手の出現を望むのは難しいでしょう。また日本は、日本人のみの遺伝子ではもはやスーパースタークラスの出現は望めません。日本国内の化け物クラス級の選手が欧州に渡ってどれだけ期待を裏切られてきたことか。移民や移民の子が世界的な活躍を披露している他スポーツの現状を見ても明らかです。
 
さて、問題に対する総合的な答えは 「う~ん…、今から50年後くらいには優勝するチャンスがやっともらえるのかな?」と益々悲観的な予想に至ってしまいました。しかし、サッカーというものは戦術や戦略、育成など理論づけられて繁栄してきましたが、理論のみではなく突発的に何かが起こることも期待できます。モンスタークラスの選手や監督の出現、新たな戦術の台頭など、筆者はそういったサッカーの神秘的な側面も期待しています。しかしながら、筆者の世代が生きている間は豪日両国がW杯トロフィーを掲げている瞬間には現実的に立ち会えない、と思っています。一方、今後の活躍によってステップアップを図ろうと野心を持っている選手がほとんどだと思うので、将来に期待がもてるのも楽しみの一つですね。


【筆者:junchang】2010年よりサッカーについての独自の見解を自身のブログ「junchang & the MFF」に掲載。1日2万ページビューを記録することもあり、記事がlivedoor系サッカーサイト「SOCCER JOURNAL(サッカージャーナル ※現在閉鎖中)」に転載されたこともある。 ブログ:http://blog.livedoor.jp/junchang512/







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