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【パースエクスプレス・マガジン】国籍選択のトラブルについて


 

日本とは社会の習慣やシステムが異なり、また言葉の違うオーストラリア。そこで起こった法的トラブル。パースの弁護士事務所の弁護士やプラクティス・マネージャーが毎月、ケーススタディで問題解決のアドバイスを提供する。
 

ケーススタディ 05

国籍選択のトラブルについて

 

トラブル

 
「現在、私はオーストラリアの永住権をもっていますが、近い将来、市民権取得を考えています。ただ、永住権と市民権の違いがいまひとつわかりません。教えて頂けますか?」
 

 

パースの弁護士事務所『Equitas Lawyers』からのアドバイス

 
「オーストラリアに長期で滞在している人は、既に永住権を持っている方も多いと思います。そして、日本人永住権保持者の中には、オーストラリアでの生活の基盤の期間が長くなればなる程、オーストラリアの市民権という選択肢も頭をよぎるのではないでしょうか。今回は、ご質問の永住権と市民権の違いを中心にご説明します。
 

【永住権と市民権の違い】
まず、永住権と市民権(国民)の大きな違いは、選挙権の有無です。長らく住んでいるけど永住権保持者は国の政治に有権者として参加することができません。さらに、永住権保持者は犯罪などの関与等により永住権が失効し、国外追放という可能性もあります。市民権保持者は何があっても国から追い出されることはありません。
 

近年、オーストラリアの国会議員の二重国籍が問題になりましたが、連邦政府関係の仕事の多くは市民権保持者に制限されています。オーストラリアの税務署も採用に関して永住権保持者は不可で、市民権保持者のみとなっています。
 

また、永住権保持者は、オーストラリアへの出入国のために5年おきに永住権の更新(Resident Return Visa)が必要で、また場合によっては移民局が認める期間をオーストラリア国内で過ごさなければ永住権の更新ができなくなるといった可能性があります。
 

【二重国籍】
日本は、原則として2重国籍を認めていない国です。つまり、オーストラリア人として生きるということは、日本人ではなくなるということでもあります。オーストラリアでは2002年にオーストラリア人の重国籍を認めましたが、日本の国籍法によると日本の国籍以外の外国籍を有する人(重国籍者)は、一定の期限までにいずれかの国籍を選択する必要があります。期限までに選択をしない場合には、日本の国籍を失うことがありますので注意が必要です。
 

国籍選択の手続等の相談については、日本の法務局・地方法務局(法務局ホームページhoumukyoku.moj.go.jp)や市区町村役場、外国にある日本の大使館・領事館(外務省ホームページwww.mofa.go.jp)でも受け付けています。ただし、留意しなければならないことに国籍の得喪事態に関しては、国籍法に定められた要件を満たした時点で、いわば自動的に発生するということです。本人の届け出が提出されなくても、事実に基づき判断されるため、日本国籍の人が日本国以外の国籍を取得した時点で日本籍が既に喪失されている場合が多いでしょう。
 

【違法行為】
例えば、日本国籍の人がオーストラリアの市民権を取得した後、国籍選択の手続きを怠り、日本国籍の有無について事実と異なる内容を申告して役所への届け出(婚姻や出生)を行ったり、日本のパスポートや各種証明書(戸籍謄本)を申請することは違法行為です。届け出をしていなくても、日本国籍が自動的に喪失した人は外国人として扱われ、その外国人が虚偽の申請をし、日本のパスポートを申請・不正取得するということになるので違法行為として処罰の対象になります。旅券法違反は5年以下の懲役または300万円以下の罰金となります。
 

現在、オーストラリアの移民局の市民権改定法について議論が続いています。ここ20年ほどの間で、市民権取得も次第に難しくなってきています。これからもどんどんと厳しくなってゆくことが予想されます。もし永住権保持者でオーストラリアにて長いこと生活し、歳をとればとるほど、国籍選択の問題が重要になっていきます。今回のご質問者の方にも関わってくることでしょうが、日本での遺産相続、年金問題、どこに骨を埋めるか等ももし市民権を取得し、日本国籍を喪失することで大きく違ってくるかもしれません。よって、安易にオーストラリアの市民権を取得するのではなく、事前に十分に検討することをお勧めします」

〈参照〉
Embassy of Japan in Australia(www.au.emb-japan.go.jp/itpr_ja/consulate_kokuseki.html)

 
 

私たちがお応えします。

パースの弁護士事務所『Equitas Lawyers』の弁護士や弁護士事務所プラクティス・マネージャー、『Equitas Migration』の移民法コンサルタント。

『Equitas Lawyers』『Equitas Migration』
各分野の専門の弁護士が所属するパースの弁護士事務所。日本人が通訳として窓口になり、メールや電話も日本語で対応してくれる。また、ビザに関してもコンサルタントが日本語で対応可。

 

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