2019年11月、中国湖北省(Hubei Province)武漢市(Wuhan City)付近で新型のコロナウイルス(COVID-19)が初めて検出された。そして年が明けた1月にヒトからヒトへの感染が確認され、中国大陸から以後、東アジアやヨーロッパ、北米を中心とし世界各地にその新型ウイルスは拡散し始めた。ここオーストラリアにもその拡散の手は伸び、感染による最初の犠牲者は在パースの人だった。
今回の特集は、3月8日現在も感染拡大が止まらず、世界保健機関(WHO)の発表では世界で感染者数が10万人を超え、死者は3,700人を上回った新型コロナウイルス(COVID-19)について、西オーストラリア州の情報を優先してお届けする。
主な情報参照元:西オーストラリア州の保健省www.healthywa.wa.gov.au/オーストラリア保健省www.health.gov.au/日本厚生労働省www.mhlw.go.jp
■世界で感染の拡大が止まらない
新型コロナウイルスのQ&A
新型コロナウイルスについて知っておくべき情報をQ&A形式で紹介する。
Q1:コロナウイルスと新型コロナウイルスの違いは?
A:今までに人に感染する「コロナウイルス」は7種類見つかっている。4種類は一般的な風邪の原因とされるもの、2種類は2002年に発生した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」と2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」。そして、残りの1種類が2019年12月以降に問題となっている「新型コロナウイルス」。
Q2:SARS-CoV2とCOVID-19の違いは?
A:SARS-CoV2は、「Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2」の略で2020年2月11日、国際ウイルス分類委員会(ICTV)が新型コロナウイルスを指して命名し、COVID-19は「Symptoms of coronavirus disease 2019」を指し、その新型コロナウイルスによる急性呼吸器疾患や感染症を意味する。
Q3:新型コロナウイルスはどのように感染するのか?
A:現時点(3月)では、飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染の2つが考えられている。飛沫感染は、感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つば等)と一緒にウイルスが放出され、そのウイルスを口や鼻から吸い込んで感染。接触感染は、感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で手すりやドアノブなど周囲の物体表面に触れて、感染者のウイルスがそこに付着し、未感染者がその部分に接触すると感染者のウイルスが皮膚や粘膜から感染。感染者に直接接触しなくても感染する。
Q4:感染後、どのくらいで症状が出て、その症状とは?
A:感染してから症状が出るまでの潜伏期間は約 2~14日間と言われている。症状は発熱と咳、息切れや体のだるさが主で、風邪の症状に似ている。重症の場合は、深刻な呼吸器疾患を引き起こすことがある。
Q5:症状がある場合は?
A:仕事や学校を休み、本人のためでもあるが、感染拡大の防止のため外出をしない。そして、医療機関やコロナウイルス・ヘルスインフォメーションラインに電話をして指示を仰ぐ。西オーストラリア州では、3月10日より新型コロナウイルス感染専門のクリニックが3つの病院に設けられ、そこだけは予約無しで直接行き、検査を受けることができる。3つの病院は『Royal Perth Hospital』『Sir Charles Gairdner Hospital』『Fiona Stanley Hospital』(8am~8pmの毎日)。
Q6:予防は?
A:石鹸と水で毎回20秒以上、頻繁に手を洗う。アルコールのハンドジェルで消毒。咳やくしゃみはティッシュまたは曲げた肘で覆う。風邪やインフルエンザのような症状がある人との接触を避けるなどして、良好な衛生状態をキープする。
Q7:マスクでの予防は?
A:西オーストラリア州保健省はマスクでの予防は奨励していない。日本厚生労働省でも、“屋外などでは相当混み合っていない限り、マスクを着用することによる予防効果はあまり認められていない”としている。
Q8:オーストラリアの出入国制限は?
A:3月5日にオーストラリア政府は新型コロナウイルス対策として中国またはイランへの渡航歴のある外国人の入国制限措置を3月7日から1週間延長、また本件措置の対象を韓国にも拡げたことを決定した。実際、9日にはイランへの渡航歴のあった男性の妻が感染し、西オーストラリア州で最初の「ヒト-ヒト感染」が確認(情報元:ABC News/3月9日)。また、10日現在でオーストラリア外務貿易省は、中国とイランは“渡航中止”、日本へは“注意強化”といった渡航情報を勧告している。
■スペシャル・インタビュー
専門家に聞く
世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルス(COVID-19)。パースで日本語で診察ができる日本語医療センターの千綿真美さんにお話を伺った。【2020年3月10日までのインタビューまとめ】
編集部注)インタビューは数回に渡って行われたものをまとめた。千綿さんも『Government of Western Australia(www.health.gov.au)』からの情報を参照元として、インタビューに対応して頂いた。
オーストラリアでの新型コロナウイルスにおける感染状況をお聞かせ下さい。
コロナウイルスは感染してから2日~14日で発症することがわかっています。特に有効な治療や予防接種などはありません。2020年3月10日時点での情報ですが、オーストラリア国内での感染確認者は100名(うち3名が死亡)、そのうち15名は発生地と言われている中国武漢市の関連、10名は日本の横浜に停泊していたクルーズ船「プリンセスダイアモンド」からの帰還者、45名は様々な国外からの帰国者、それ以外は国外渡航歴のない人で国内での感染が疑われ調査中となっています。西オーストラリア州内の感染はそのうち6名(1名死亡)で、10日の時点では州内感染はまだ確認されていません。
感染に疑わしい場合の対応方法を教えて下さい。
まず、感染者に接触していない、あるいは14日以内に国外に出ていないのであれば、発熱したからとすぐにパニックにならないで下さい。もし症状が出る前の14日以内に中国本土、イラン、イタリア、韓国、カンボジア、香港、インドネシア、日本、シンガポール、台湾などのハイリスクの国だけでなく、どこの国からでも入った人で、発熱や咳、鼻水などの呼吸器症状が出た場合、かかりつけのGPもしくは新型コロナウイルス情報ライン(電話番号:1800 020 080) に電話をして、どうすればいいか指示を受けて下さい。
医療機関に直接行く前に電話をすることが大切なんですね?
そうです。心配になるのはわかりますが、何より人から人へとオーストラリア国内で感染者が広がらないようにするために以下3点を守るようにお願いしたいです。
-重症でない限りは、まずは自宅待機(ホームステイやシェアハウス、寮などでは自分の部屋に待機)すること。学校や仕事へは行かないようにする。
-日本語医療センターだけでなく、いかなる医療機関を受診するにあたっても、まずは必ず電話をして、状況を伝えてどのようにすればいいか指示を受ける。いきなり医療機関に行かない。
-呼吸困難を伴う重症の場合も、救急車かまずは最寄りの救急病院へ電話をしてから状況を説明して指示を受ける。
医療機関に電話した後はどのような対応になるんですか?
当センターでは、新型コロナウイルスの検査は自宅に検査技師が訪問し、採取する方法をとっています。検査機関も大変混雑、混乱しており時間もかかっている状況ですが、その間は自宅待機で待つことになります。ただ、3月10日から西オーストラリア州政府が次の3カ所に新型コロナウイルス感染専門のクリニックを設置しました。こちらには電話をせずに予約なしで直接行って構いませんが、発熱や咳、鼻水などの症状があり、2週間以内に海外への渡航歴がある、あるいはコロナウイルス感染が確認された人と接触したなどの可能性がある人のみのクリニックです。検査を受ければ結果が出るまで自宅待機となります。
-Royal Perth Hospital:Ground Floor, Ainslie House, 48 Murray Street, Perth
-Sir Charles Gairdner Hospital:C Block, Hospital Avenue, Nedlands
-Fiona Stanley Hospital:Bedbrook Row, north-eastern end of hospital, Murdoch
※毎日午前8時~午後8時
最後に、世界的には感染者がまだ少ない西オーストラリア州ですが(3月10日現在)、予防についてお聞かせ下さい。
日本を含めアジアでは、“マスクが買えないパニック”が起こっていますが、オーストラリア政府の見解はマスクが有効なのは実際に感染と診断された人が使用して他の人に感染させないためであって、健康体の場合にマスク使用で感染の予防や防げるという根拠はあまりないというものです。したがって、マスクより手洗いの励行、咳やくしゃみをする時は肘を曲げて腕で口元を覆う、風邪症状のある人との接触は避けるなどが有用だとされています。とにかく今はオーストラリア国内、そして西オーストラリア州内で感染者が広がらないようにするために個人が先に紹介した3点を守ることが大切となるでしょう。
【日本語医療センター 千綿 真美(ちわた まみ )さん】 日本語医療センターのマネージャーとして、診察時の日本語への通訳やその他医療手続きの代行も行ってくれる。ウェブサイト:www.nihongoiryocentre.com.au |
■最新の情報にアップデート
確かな情報で行動
世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は3月9日、世界で感染拡大が続く新型コロナウイルスについて「パンデミック(世界的な大流行)の脅威が非常に現実味を帯びてきた」と述べた。このような事態では、確かな情報元から正確な情報を掴んで迅速に対応することが大切となる。ここでは主な情報元を紹介する。
西オーストラリア州の保健省:www.healthywa.wa.gov.au
西オーストラリア州政府の保健省のウェブサイト。自治体レベルでの情報も得ることができる。
オーストラリア保健省:www.health.gov.au
オーストラリア保健省のウェブサイト。国内の感染状況や海外への出入国制限措置など閲覧できる。
PDFファイルバージョンで中国語や韓国語、イタリア語に翻訳した新型コロナウイルスに関する情報やオーストラリアとして今後の対応策などの情報も収集できる。
オーストラリア外務貿易省:www.homeaffairs.gov.au
オーストラリア外務貿易省の新型コロナウィルス特設:www.smartraveller.gov.au
オーストラリア国内でのコロナウィルスのヘルスインフォメーションライン:1800 020 080
世界保健機関(WHO): www.who.int
日本厚生労働省:www.mhlw.go.jp
日本国の厚生労働省のウェブサイト。日本における新型コロナウイルスに関する最新情報が掲載。
日本国首相官邸:www.kantei.go.jp
日本国外務省海外安全:www.anzen.mofa.go.jp
在パース日本国総領事館:www.perth.au.emb-japan.go.jp