【Image from Kayo Sports Screenshot】
2月26日にAリーグデビューを果たしてまだ一ヶ月ほどの背番号8番、太田宏介。すでに不動の左サイドバックとしてパースグローリーのDF陣を牽引する中、前半の35分に4バックの一角、太田の同僚に退場処分が下る。
<Aリーグを知る記者の視点 A League Football Journalist’s Point Of View> 今シーズン(A League 2020-21 Season)から、Aリーグを知る記者の視点から更に詳しくパースグローリーの試合についてお届けする。 |
2020-21シーズンAリーグ パースグローリー試合結果
Matchweek 14(2021年3月27日)
Perth Glory 2 – 1 Newcastle Jets 会場:HBF Park
「勝てる」「勝たなければならない」の思いがチームの統一意思だった。左サイドバックの太田のファーストプレーも前線への得意のクロスだったように、試合開始からその姿勢は全ての選手によってプレーの随所に反映されていた。
また、3月22日に契約発表し、チームに加わったのがまだ一週間足らずの背番号2番、右サイドバックのJason Geriaが先発メンバーへ抜擢されたのもコーチ陣のこの試合に賭ける思いの表れだろう。Geriaは元オーストラリア代表で、2018年から3シーズン、Jリーグのジェフユナイテッド市原・千葉でプレーしていた。
さて、試合はその両サイドバックの攻撃参加、DF陣のビルドアップから先制点が生まれた。前半17分に最後列にいた背番号6番のMF、Osama Malikから右に展開。PA付近でボールを受けたストライカイーの背番号9番、Bruno Fornaroliが相手DFを背負いながらも反転してゴール前にパス。そこにこの攻撃の起点となったMalikが走り込むも、技ありのスルー。流れたボールはフリーだった背番号38番で、この日はMFで出場したCiaran Bramwellへ。Bramwellはプレシャーなく、ゴールの右側へ蹴り込み、自身にとっては嬉しいAリーグ初得点となった。
さらにグローリーは攻める。試合を放映している『Kayo Sports』の解説者も“太田のキックは相手チームに脅威だ。質が高い!”と絶賛する中、24分に右からのCKを太田が蹴る。その太田のキックは相手選手にクリアされるも、再度、CKを得るグローリー。そして、左からのCKのキッカーは背番号88番のMF、Neil Kilkenny。
ボールはゴール前に。この日の対戦相手、Newcasle Jetsのキャプテンで、グローリーでもプレーしていた背番号44番のDF、Nikolai Topor-Stanleyの背後を取ったグローリーのDF、背番号29番のDarryl Lachmanが頭で合わせ、追加点を奪う。LachmanにとってもAリーグ初得点となるが、ここでもDF陣の活躍でグローリーは試合の主導権を握った。
ただ、その10分後に選手やコーチ陣、グローリーファンが抱いた圧勝への予感がへし折られる。
背番号17番のグローリーのキャプテン、Diego Castroが不必要なボールキープの後、行き場をなくしバックパス。そのバックパスが相手選手へ渡る。その対応を体を張って阻止したのが背番号5番のDF、Jonathan Aspropotamitis。Aspropotamitisは試合開始早々に一枚、イエローカードをもらい、このプレーでもイエローカードを受けてしまい、2枚のイエローカードでレッドカードとなって退場処分が下された。
これでグローリーは残りの前半15分間、後半の45分間の計60分間は10人で臨まなければならなくなった。
ハーフタイムに太田は、語尾を強めながら「乗り切ります」と一言残して、後半のピッチに戻った。
10人になった直後と後半開始で選手交代をしながら11対10の局面に対応したグローリー。当然、DFの4人にしわ寄せが及んだのは言うまでもない。一人目は、前半でポテンシャルの高さを見せたが、チーム帯同まもなかったGeriaに後半開始から交代した背番号16番で、まだ16歳のDF、Joshua Rawlins。2人目は、退場処分となったAspropotamitisのポジションへ一点目の殊勲賞、そしてこの試合の『Player of the Match』に選ばれたMalik。3人目は、2点目を叩き出したLachman、そして最後の4人目は太田だった。
特にJetsは、攻撃の起点として右ウィンガーの背番号17番、Valentino Yuelにボールを集めていたため、Yuelに対峙する太田は時にひとりで相手3選手に対応する局面もあった。
そして、グローリーの前線の選手も守備の援護に奔走する中、59分(後半14分)に失点を許すも、時計の針が進む中、相手の攻撃を跳ね返しながら何とか耐え凌ぐ。試合時間残り10分。一人少ない状況でも攻めの姿勢は崩さない太田からのクロスは相手GKのハンブルを誘う。また、太田の3連続のスローインもひたすら味方のFW選手の頭目掛けて投げ込む。徹底した前へ進む姿勢は間違いなく他のチームメートを鼓舞していた。
アディショナルタイム5分。前節の『Player of the Match』だった背番号33番のGK、Liam Reddyも73分に遅延行為としてイエローカードを受けていたが、ゴールマウスに立ちはだかる。相手のCKキックでは、加勢するためGKまでゴール前に忍び寄る。自分のパスミスから10人の状況を招いたキャプテンのCastleもボールをキープして、時間を稼ぐ。
そして、試合終了のホイッスルはなった。
試合後、太田は前節同様、多くの日本人観客に挨拶するためスタンドに駆け寄り、COVID-19によるレギュレーションで握手や記念撮影は禁じられている中でも、深々と頭を下げた。
先制点に追加点、レッドカードに失点。10人で勝ち点3を死守、と波乱の90分間だったが、太田は冷静に「80分からの残りの10分は、さすがに時間が経つのが遅く感じましたね。ただ、勝てて本当に良かったです」と試合を振り返っていた。
【試合結果】
Perth Glory 2 – 1 Newcastle Jets
得点:
<Perth Glory>
Ciaran Bramwell(17分)
Darryl Lachman(24分)
<Newcastle Jets>
Roy O’Donovan(59分)
文:今城康雄(いまなりやすお)。パースの日本語メディア「The Perth Express」の代表兼、編集長。2005年のAリーグの開幕以来、リーグ公認のメディアとなっている「The Perth Express」のジャーナリストとしても、パースグローリーのホームゲームはほぼ全試合、記者席より取材を重ねてきた。2020年よりパースグローリー日本地区担当マネージャー兼任。
【参考】
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