慣れない環境だからこそ体調管理は大切になります。その際のメディカルチェック(医療検査)も臆さず受けたいところ。しかし、どんなチェックをされるのか…。日本との違いを参考に、オーストラリアのメディカルチェックを専門家が紹介します。第5回目は「血液検査(コレステロール)」のメディカルチェックについてです。
血液検査(コレステロール)について
今回は、前回の赤血球や白血球などの全血球数に引き続き、健康診断などでよく検査されるコレステロールについてお話しします。コレステロールは血液中だけでなく、人間の全身を作る約60兆個の細胞の細胞膜を構成し、また性ホルモンや副腎皮質ホルモン、胆汁(消化を助ける酵素)を作るのに必要とされ、人体になくてならないものです。しかし、多すぎると動脈硬化症など生活習慣病の原因になります。
コレステロールの検査での主な項目は下記となります。
●Cholesterol(コレステロール)
●Triglyceride(中性脂肪)
●HDL Cholesterol(HDLコレステロール、いわゆる善玉コレステロール)
●LDL Cholesterol(LDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロール)
◆コレステロールと中性脂肪の役割とリスク
コレステロール(Cholesterol)と中性脂肪(Triglyceride)はともに脂質ですが、コレステロールは細胞膜やホルモン、消化酵素の胆汁を作るのに対し、中性脂肪は体内エネルギーとして使われ、その残りは主に皮下や内臓脂肪として蓄えられます。コレステロールや中性脂肪が増え、高脂血症が長く続くと動脈硬化を起こし心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高くなります。中性脂肪が増えすぎると肥満が進行し、急性膵炎や脂肪肝の原因となります。
◆善玉コレステロールと悪玉コレステロール
コレステロールは、たんぱく質と結びついて血液中に溶け込んでおり、これをリポたんぱく質と言います。リポたんぱく質は、主にその比重が高いものを高比重リポたんぱく質(HDL)、比重が低いものを低比重リポたんぱく質(LDL)と呼び、そのHDLに含まれるコレステロールがHDLコレステロール(善玉コレステロール)、LDLに含まれるコレステロールがLDLコレステロール(悪玉コレステロール)です。HDL(善玉)は、血液内を循環し、動脈壁にへばりついたLDL(悪玉)を回収し肝臓に運んでいるのに対し、LDL(悪玉)は肝臓に溜まったコレステロールを体のあちこちに運んでいます。HDL(善玉)が少なく、LDL(悪玉)が増えてしまうと血液中にLDLが残って、動脈硬化を引き起こしていきます。
◆中性脂肪増加の原因
中性脂肪が増えると、HDL(善玉)が減り、LDL(悪玉)コレステロールが増え、動脈硬化のリスクがさらに高くなります。 HDL(善玉)を下げる原因としては、喫煙、肥満、運動不足、糖尿病などが挙げられます。中性脂肪が増える原因としては肥満や食べ過ぎ、運動不足、飲酒によるものです。
◆食生活と運動による改善
コレステロールが高いと指摘され、すでに頭の痛いアドバイスを聞かれている方もいるかと思います。コレステロール改善はとにかく“食生活改善“と“運動“です。食事はたんぱく質を肉類よりも魚類や大豆製品から取り、野菜もたくさん摂取しましょう。食事の量を全体的に少しカットし、お腹いっぱいになるまで食べず、いつも腹八分でやめましょう。オーストラリアに来てから上記のような問題となる人で一番多いのが、ワインとチーズですので、思い当たる方は控えるようにしましょう。運動は少し息があがるくらいの運動で最低週に3~4回、1回につき45分以上が勧められます。
ご案内人 日本語医療センター マネージャー 千綿 真美さん
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