土の中には多くの塩類(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)が含まれている。海が塩辛いのはその塩類が雨水で川を通じて海まで運ばれ、そこで濃縮されているからだ。土の中の塩類は、水に溶けることによって地表に上がり、水分だけが蒸発して高濃度の塩水が地上に残り、時間の経過と共に土の表面に塩分が集まってしまう。これらの現象が「塩害」を引き起こすのだ。

塩害は、干ばつ時の地下からの海水の浸入、河川への海水の逆流、高潮などによる海水の浸入、乾燥地灌水、そして森林伐採などから起こると言われている。塩害にあった土地では作物が育たなくなってしまうので、オーストラリアでは今、塩害が深刻な問題となっている。

元来、オーストラリアには、塩分を含んだ湖や川があり、また全ての土が若干の塩分を含んでいるように、水と土壌に残留する塩分は、必ずしも悪者ではなかった。そして、自然界の水流サイクルによって、塩分は正しいバランス、あるいは均衡が維持されてきた。しかし、海から運ばれた塩分が、何万年もの時間をかけて陸上に積り、その塩分が西オーストラリアで起きている塩害の大部分に影響を及ぼしている。

塩分が土壌深くに留まっていれば、問題は発生しない。実際、主要な塩分は地下に留まっていると考えられている。しかし、自然の水流バランスが乱されてしまったために、地上表面に塩分が上昇し、様々な問題が発生している。

オーストラリア土着の樹木と植物は、雨水を能率的に利用し、水流サイクルの一役を担っている。植物が水分を吸い上げ塩分を処理することで、地下に流れ込む水量も塩分も少量になる。しかし、農業の発展のため、1年の間に行う収穫用農地と牧草地の入れ替えや、森林伐採の進行などから、問題が生じてきた。

収穫用農地と牧草地の入れ替えを例に挙げると、入れ替えの間に不要になった雨水が、正しい水流サイクルのルートを越えて地下水位に進入し、水位を上昇させ、地下水として留まる。

地下水位が上昇すると、地下水は土壌中の塩分を溶かし、土壌表面まで押し上げる。その結果、樹木や植物が処理できる塩分の限界を超え、その塩分によって樹木や植物は死に追いやられる。そして、小川や川、湖に流れ込んだ塩分は、蒸発によって濃縮される。

また、街中で塩分が道路、建物、レール、堤防などの基礎構造にも損害を与える。これらは、非常にシリアスな問題となっている。


■西オーストラリアの至る所で、人々は塩害に犯された土地を目にする。Katanningの近郊。塩の影響を受けてしまった農地。
写真:Bill Bachman ( Lochman Transparencies ) 資料提供:CALM


■この沼地では塩害により木が枯れ、その根元に塩の付着が起こっている。西オーストラリアの小麦生産地帯Quairadingでの、塩分による壊滅的な影響。
写真:Bill Van Aken ( Csiro )
資料提供:ACF


This site is developed and maintained by The Perth Express. A.C.N. 058 608 281
Copyright (c) The Perth Express. All Reserved.