オーストラリアの塩害問題の解決に向けて取り組んでいる、オーストラリア自然保護財団ACF(Australian Conservation Foundation)のCorey Wattsさんにお話を伺った。

オーストラリアには、元々自然に塩害が発生しているところがいくつかあります。しかしながら、新しく塩害にあっている土地は、自然のものではなく、環境や産業、地域社会に大きなダメージを与えています。1850年代、線路沿いの更地で、この“副次的(自然でない)”塩害が最初に記録されました。1920年代に入り、西オーストラリア州のエンジニアが最初に、なぜ塩害が発生するのかを発見しました。土地に元々生えていた植物=自生植物は深い根を持っており、多年生で、地下水を地下深くに保っていましたが、自生植物が生えていたところは切り崩され、根の浅い植物が植えられ、塩分を含んだ地下水の上昇が引き起こされたことが原因でした。

現在、西オーストラリア州の乾燥地は、最も深刻な塩害を抱えています。西オーストラリア州は、短い間に、小麦生産地帯と呼ばれる地域(約95%が農業のために開拓されています)の自生植物の数多くを破壊しました。そしてまた、西オーストラリア州の地下水の流れる構造は場所によっては東側の州と異なるのです。しかしながら、他の州の塩害も西オーストラリア州にすぐに追いつきそうな勢いで深刻化しています。他地域で塩害が表面化するのは時間の問題でしょう。

時には、耐塩性の作物や牧草を育てたりするなど、様々な産業にその塩を役立てることができます。しかし、現在までに、塩は土地の表面にダメージを与え、多くのかけがえのない自然環境や生産価値のあるものを破壊しています。塩害にあった土地から塩を取り除く努力をせずに、ただ単に資源として塩を利用することは賢いこととは言えません。さらに、塩は精製せずにそのまま使えるという訳ではないし、需要もありません。2050年までに、タスマニア州の2倍以上の大きさのエリアが塩による被害を受ける危険性を持っています。私達は塩を利用することで塩害問題を解決できると思っていません。まず最初に、私達をとりまく自然環境や街、農場、経済への塩害のダメージを取り除いていこうと努力することが大切なのです。必要なのは、何事にも積極的に取り組むことです。土地の利用方法をいろいろな意味で変える必要があります。例えば、小麦を育てたり羊を放牧している土地を、植林地などに変えることが必要なのです。

塩害はあまりに大きな問題であり、個人的にわずかな植林をするだけでは、残念ながら大きな効果は期待できません。しかしながら、個人個人が、そしてオーストラリアが直面している、塩害を含む環境問題に気付くことはとても意味があることだと思います。小麦生産地帯のような塩害にあっている土地を訪れ、塩害が私達にもたらす影響を直に見ることが必要です。そして、政界やビジネス界のリーダー達と共に塩害問題を提議することも可能なのです。ACFやConservation Council of WAは、政策を変えるために協力してくれる一般の人々もサポートしながら、オーストラリア企業や農場経営者、科学者とともに、政策を動かし、塩害問題を根源から解決するために働いています。

■オーストラリア自然保護財団ACF(Australian Conservation Foundation)の塩害対策プログラム・コーディネーター、Corey Wattsさん撮影による塩害の現状。影響が出ている西オーストラリア各地を訪れ、写真撮影した。資料提供:ACF


This site is developed and maintained by The Perth Express. A.C.N. 058 608 281
Copyright (c) The Perth Express. All Reserved.