「『働く』ということ」

 まあ、ビルマの人にはそう映っても仕方ない。「お金がない」と言いながらも定期的にビルマに来ているんだから。日本での私の収入が、同年代の日本人に比べて、どんなにか少ないと知ったら驚くだろう。
 「それほど稼いでいるわけじゃないよ」
 そう説明しようものなら、あとが大変。
 「じゃあ、そんなに収入が少ないのに、なんでこの仕事をしているのだ?」
 それを説明するのが難しい。
 「お金のために働いているんじゃないよ」
 そう告げようなら、普通のビルマ人はまず驚く。
 「えっ、働くってお金を稼ぐことでしょ。違うの?」  私の出会ってきた現地のビルマ人は、働く=報酬を得る、それがほぼ、同義語になっている(まあ、この考え方は、いわゆる途上国を訪れると一般的に感じることだが)。

 「労働」を通しての社会参加、自己実現、っていう考え方は、ない(と言えば言い過ぎかな?)。
 「はたらく=端(はた)の者を楽にする」という利他的な考え方は薄いようだ。社会システムの維持のために相互監視の目が張り巡らされた軍事政権下で、汲汲しながら生活する人々にとって、働くということは生存していくための手段で、他の人のことを考える余裕さえないのかもしれない(まさに、そいういう社会システムを軍部は育てているのだが)。
 「自由がない」というのは、単に政治的なシステムばかりでなく、人間の生き方そのものにも影響を及ぼしているようだ。

 


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