「『働く』ということ」

  ところで、日本に限らず東南アジアや欧米において、ビルマに関する報道は(もちろん私の報告も含めて)偏っている。その代表的な例として、ビルマを語る際に、1991年にノーベル平和賞を受賞した「アウンサンスーチー氏」VS「ビルマ軍事政権」という単純な対立構図を描いていることだ。
  ビルマは今、実のところ、タンシュエ上級大将という独裁者が国政の全てを取り仕切っている。絶対的な権力を持つタンシュエ氏がスーチー氏を抑え込んでいるというのが実状である。両者が、あたかも対等な力関係で対立しているという図式ではない。
  軍の威厳と支配力を信じるタンシュエ氏は、国民は国家に従属するものだ、と信じている。それゆえ、民主主義や人権思想を謳いあげるスーチー氏の存在が気にくわない。

  一方スーチー氏は、国防の観点から軍という組織はビルマに必要だと語っている。つまり、軍部は自らの役割を担うために兵舎に戻るべきだ、と説明している。政治は政治家に、経済は経済の専門家に任せるべきだ、と正論を語っている。タンシュエ氏にとって、軍部を国家(政治家)の下に置こうとしているスーチー氏の考え方が許せないらしい。
  そのスーチー氏は1989年以来、逮捕・自宅軟禁・解放を繰り返し経験し続けている。過去16年間のうち、自由の身であったのは6年間ほどで、それ以外のほぼ10年間は拘束状態に置かれてきた。1990年の総選挙で議席の8割以上を獲得したスーチー氏の政党は今、タンシュエ氏によって一方的に非合法組織としての烙印を押される危機をも迎えている。
   


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