「異国に生まれ育って」 —あるカレン難民女性の生活(2)—

 ビルマ・カレン州に足を踏み入れたことのないタエポーにとって、いわゆる「自治権」を求めて半世紀以上も続く民族闘争を理性的に理解できない。筋金入りの元ゲリラ兵士だった父親(58)からカレン州(カレン語でカレン州のことを「コートレイ:kawthlei」と呼ぶ‐「花咲く大地・平和な土地」の意)のことを聞かされても、タエポーにはビルマ側に郷愁を感じる祖国はない。
 「お父さんはビルマ人の全てを否定してしまう。私はビルマの軍隊や兵士は嫌いだが、村に住む普通のビルマ人とはうまくやっていける。ビルマ人であろうと、カレン人であろうと、私は戦争は嫌いだ。見たことも住んだこともない土地の為に闘うって、どういうことか分からない」
 タイ・ビルマ国境は、厳しい自然環境を受け入れなければならない日常生活が続く地域である。


そこに、戦闘という人為的な厳しさが加わっている。雨季の湿度は高く、例えばカメラのレンズなどきちんと掃除をしないで1週間も放っておくとかびが生えてくる。さらに、タイ・ビルマ国境のマラリアの猛威は強烈である。そこで4世代に及ぶ内戦が続いている。そんな過酷なジャングルの中で戦闘を続けてきた彼女の父親は、ビルマ人に対して憎悪を隠そうとしない。


 


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