「確かに(父母が生まれた)ビルマという国やその首都・ラングーンがどんな様子なのか興味はあります。でも、私はタイ人としてタイの土地で暮らしていきたい。」
 タエポーはそうはっきりと言う。
 今住んでいる土地にこそ愛着を持ち、そこに生活基盤を見い出そうとする彼女のようなカレン人の出現は、カレンの伝統文化の礎をビルマ・カレン州の土地(コートレイ)に求めて、闘争を続けてきた父親のような旧世代の眼にはどのように映るのだろうか。そのことについて父親はあまり多くを語らない。

 英国人と結婚し、今はタイの首都バンコクに住む2歳年上の姉ソポムーは、私にカレン人社会に潜む問題を指摘していた。 「ビルマ軍政府に対して抵抗運動を続けているKNU(カレン民族同盟)は結局、男性中心の世界だ。
反政府組織の会議の中でKNUの幹部は、ビルマ政府の人権侵害や民族間の不平等政策に非難の声を上げている。でも、彼らは、会議が終わればそんな理想論は全く忘れ去っている。カレン男性のいう平等は、会議が終わればそれでおしまい。カレン人社会の家庭内の男女の不平等はほおって置かれたままだ。女だからというだけで、服装や恋愛も、行動も自由にならない。そんなカレン文化の為の闘いなら、私はごめんだ。」

   


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