冷静に考えると、それは単に「ちんけ」な感傷に過ぎないとわかっている。だからこそ、よけいにもの悲しくなる。
 今回取材には、斉藤茂男著『記者志願』を持って来ていた。終わりの方に木下順二監督の『子午線の祀り』を引用していた部分があった。何回読み返しても、字面は理解できたが、その意味するところを飲み込めなかった。だが今回、ゆっくりと星空の情景を思い浮かべながら読んでみると、その内容がすっと入ってきた。創作平家物語の一部分、大将軍、新中納言・平知盛と影身との会話である。
 知盛−あの星から眺めれば、いつか必ずそうなるはずの運命の中へ、ひと足ひと足進み入って行くわれら人間の姿が、

 

豆粒ほどの人形の…星々にもし情(こころ)あらば、それを哀れと思うか、健気と思うか−
 影身−星々に情(こころ)なぞございますまい。…。情(こころ)ありませんからこそあの星々は動きを乱すこともなく、あのようにいつまでも老いず静かにめぐっているのでございましょう。  
 知盛−
星は静かにめぐっている。だが、影身よ、わが心は修羅だ。われらうつそみの人間たち、あすはただ無益な首の取り合いへと、無二無三に突き入って行かねばならぬ。
 影身−……。大自然の動きは非情でございます。
 知盛−人の世の営みとはかかわりないことといいたいのか!

   


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