他者の死とどう向き合うか

 扉のない粗末な小屋をのぞき込む。女性が一人、身体を横たえていた。目と目が合う。1分間近く、じっと見つめ合った。私は無意識的に膝を折り、彼女の目の高さに自分の目線を合わせた。彼女のまぶたは大きく見開いたまま。目の玉は動かない。ほんのすこし痩けた頬は、身体的な特徴なのか、病気のせいかわからない。しかし、下半身を覆っている巻きスカートがずれて、腰骨が見えた。その瞬間、あ、もうだめかな。そんな直感を得た。骨と皮だけになった人間の一部分を見てしまった。
 目線を合わせたままカメラを握りしめ、構える。彼女は、一瞬、微笑んだ(ような気がした)。200mmの望遠レンズをのぞき込んで、彼女の顔を凝視していた。


 知らぬ間にシャッターを切った。ピントを再確認するために、ほんの一瞬でもまばたきをしていたら気づかなかったろう。それほどの短い瞬間の笑顔だった。

 近所の人に名前を聞いてみる。ボンリアンさん、25歳。おせっかいな説明が続いた。
 


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