「おばあさん、お酒好きだってね。まだたくさん飲んでるの?タバコは身体に悪いですよ」。私は、おばあさんの身体を労わるつもりで、声をかけた。
  「酒もタバコもやらなければ耐えることができない、そんな生活だったのよ。何も知らない16歳の私に、酒とタバコを教えてくれたのは、日本のヘイタイさんなのよ。」
  私は再び、何も言えなくなってしまった。

 おばあさんたちは手分けをして、「ナヌムの家」の支援者へ会報を送る準備をしてる。一つ一つ丁寧に、文書を折り畳んでいく。よく見てみると、発送準備をまったく手伝わないおばあさんもいる。
 「さあ、食事が始まるよ。行きなさい。私はお腹が悪いから、食べません。」

    李さんは、会報を丁寧に畳みながら、私に言った。
 「ナヌムの家」での初めての食事が始まった。みんな席に着いたようだ。人数を数えてみる。共同生活をしてるのは9人だと聞いていたが、テーブルについていない李容女さんを含めても10人いる。
 早めに食事を終わらせ、李さんに聞いてみた。「ああ、私はここに住んでないのよ。昔は住んでたんだけど、今はソウルに一人で住んでるのよ。みんなと一緒の生活はダメだね。でもね、時々遊びに来るの。」
  「そう、おばあさん。話し相手がいないから寂しいんだね。」
  「そりゃ、寂しいよ。」
  李さんは、顔を上げずに、ほとんど聞き取れない声で、つぶやくように言った。
   


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