私の目の前で、腰をかがめた少女が働いていた。全身を隠すほどの大きな麦わら帽子をかぶっている。近づいて、下からひょいと顔をのぞき込む。あ、なんと、少女ではなく、おばあさんだった。子どもの撮影に少々飽き始めていたせいか、何気なく、そのおばあさんにタガログ語で話しかけてみた。
「アノパガラン(名前は、なんていうのですか)?」
そのおばあさん、大きな口を開けて、声を出さずに笑顔で返答してくれた。
「(クハ〜、ハハハハハ・・・)」
私のタガログ語の発音が悪いのか。もう一度、同じ質問を大きな声で繰り返してみる。
「ア・ノ・パ・ガ・ラン?」
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「(クハ〜、ハハハハハ・・・)カティボー!(ハハハハ)」
おお、通じた。おばあさんの大きく開けた口には歯が一本もなかった。 |