自分を見つめて、テーマをはっきりさせたからといって、ことはそう簡単に運ばない。目の前にする現実はあまりにも巨大だからである。マスメディアの流す情報を遮断しなければならないこともよくある。たったひとりぼっちの行動と作業が延々と続く。出口の見えない、答えのない毎日が続く。恐ろしく孤独感を感じる。と、どうしても自分自身の、自立できない部分が見えてくる。そんな時は、例えば千葉氏の本を再読するのである。
 氏は言う、「時間の使い方の問題は、生き方の問題なのです」と。しかし、「自分が何ものなのか、どういう方向性で生きていくのか知らないでは、時間の使い方を考えても無駄だ」という。

 

 ところが、必ずしも、誰もが千葉氏のように強くいられるわけではない。私も弱い。蔵書の一つで、よく読み返す樋口健二氏の『売れない写真家』の中には、健二氏と連れ合いである節子氏とのやりとりがある。それを読んだりすると、どうしてもすぐそばに理解者がいるという生活を羨ましいと思ってしまう。また、歴史的な写真集『水俣』を作り上げた時の、ユージン・スミス氏とアイリーン・美緒子・スミス氏の関係。あるいは、『地雷を踏んだらサヨウナラ』の一ノ瀬泰造氏とご両親の関係。私は、誰にも自分の取材経験と体験を書き送り、分かち合う個人的な人がいないではないか。ないものねだりは分かっていても、寂しいものである。

   


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