現場が全て。現場に立つことから始まる。しかしながら、そんな格好の良い事を言ったとしても、現実はそんなに甘くはない。部外者の自分は、その現場で、場面の一部分となることはできても、決して当事者にはなることはできないからだ。どうあがいても私の存在などは、傍観者にちょっとだけ毛が生えた程度の代物である。
 それだから、どこに行っても、いつも感じさせられることがある。なぜ自分は写真を撮っているのか。自分に対する答えのない問いかけである。自分の行動の源泉、つまり私自分自身の、フリージャーナリストとしてのテーマへといつも戻っていくのだ。特に疲れがたまり、ふと、なんとなく写真を撮れなくなってしまうときなど。その思いは強くなる。自分のテーマに「ぶれ」が来たときなどは、どうやったらいいのか、思考停止さえ起きてしまう。


 先日テレビで、米国の映画監督スティーブン・スピルバーグ氏のインタビューを見た。「社会に対する芸術家の責任は」という問いに対して氏は、「何よりもまず自分のことをよく知り、作品に自分らしさを出すこと」と答えていた。質問に対する答えとして奇異に聞こえたので妙に印象に残った。 
   


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