シャッターを切るという行為は、一瞬一瞬の判断である。決断の連続である。現場での撮影はもちろん大切だ。だがそれ以前に、いつどこで、自分のテーマに関わるモチーフ(題材)を選び、資料を集め、どのような準備を整えるのか。全て自分で決断しなければならない。
 これもまた、自分の判断基準を再確認する作業である。
 カメラのシャッターを切るということは、自分の判断で被写体との関係性を作るという具体的な行為である。さらに写し取った画像から自分を再び見つめることができる。頭の中だけで想像していた現実と、自分が目の前にした現象をどのように結びつけ、解釈し、メッセージとして発するのか。その判断基準を常に試すことでもある。

  「明日、出かけるが、一緒に行くか」。兵站基地で、ゲリラ隊の将校から声を掛けられたことがある。行き先は、地雷原を通って、敵軍の間を縫っての行軍である。「ノー」と言うことも出来る。しかし、いつも「イエス」と答えてしまう。
 
そんな時の自分の決断は、日本での生活と完全に切り離さざるを得ない。もちろん自分のパートナーや親、友人の事まで考える必要はもちろんある。が、なぜ、今そこに自分が立っているのか、他の誰でもない、自分が立っているのか自問自答する。
 日本の空港を飛び立って、現地に入る前の中途半端な時間には、「よし、やるぞ」という高ぶった気持ちと、回りに対して「ありがとう」、「ごめんなさいという」という弁明と感謝の気持ちがいつもつきまとう。

   


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