私の絵を見たA先生は言った。「こんな赤い『肌色』はちょっとおかしいです」と。そのせいかどうか、私は評価として、画用紙の裏に大きく○を書いてもらった。その時、大多数の生徒は◎をもらったと記憶している。その時の評価は、私が絵の具を混ぜて、必死で新しい色を作ったことなど、全く関係がなかった。もっとも私は、絵の出来、不出来よりも、新しい色を創り出せたことに満足していた。もっというと、その時の楽しかった運動会のことを想像できて楽しかったのだ。
 何かを作り上げるとき、その途中の試行錯誤が大事であって、どんな結果が出るのかはあまりそれほど気にしなくていいのに ─ 今は余裕を持ってそう思える。だが、それでも小学校3年生の私への「○」は、ちょっとだけショックだった。
 このようにして、

自分が考えたことや感じたことよりも、他の人の基準に自分自身を合わせていくように徐々に馴らされていったのだ。想像力をめいいっぱい働かせ、「感性」を鍛える。小学校の高学年、中学校、高校と進むに連れ、そんな余裕はますますなくなっていった。

   


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