いずれにしても、そういう状況からして、今はストローのことを持ち出すべきではありませんでした。そんなことをしてみたところで、逆転でノックアウトされたボクサ−の泣き言にしか聞こえないだろうことは、わかっているつもりでしたから。
宵闇がせまっていました。
僕は力なく立ち上がると、裸足のまま表に出て、ふらふらとビーチに向かって、長い坂道を下って行きました。坂道の途中から視界いっぱいに広がってくる南太平洋の海原が、夕方の日差しを受けて穏やかに輝いていました。
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春先の、陸から沖に向うオフショアの風と、赤道あたりからの長旅を終えて打ち寄せる力強い波のうねりが、見事な紺色のチューブを穏やかな水面に刻み続けていました。
「MORIO、昨日はどうして逃げ出したの?」
どこかでMADISONの声を聞いたような気がしました。
「勝手に車を飛び出してしまう自分が信じられなかった。でも昨日の夜、君の寝顔を見ているうちにだんだん分かってきたことがあるんだ。」
生真面目なMORIOなら、まあこんな風に答える気がしました。
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