あの時、SEXと言う名のリングの上で、最初に仕掛けたのは間違いなく僕の方でした。けれども、途中から互角の打ち合いになり、最後にリングの上に立っていたのは僕ではなくてMADISONだったのです。リングの中央で両腕を高々と天井に突き上げながら、裸のMADISONが僕の前に立ちはだかっているのが見えるようでした。
ビーナスのように美しいその体は、しかし、決して手を出してはならないはずのドラッグの力で、ガードを固めているのでした。対して、それに向かい合う僕は、正攻法しか思いつかない不器用なボクサーそのものでした。体においても、頭においても、はるかに優位を
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保っている彼女を追い続ける無能なMORIOという名のボクサー。まるで、明日のない今の自分を象徴しているような悲しい眺めでした。
一方、MADISONにも弱点はありました。
それは無理やりドラッグの力を借りて彼女の能力を最大限に引っ張り出してしまっているために、長続きは出来ないだろうと思えるところでした。そのため唯一、追いかけるMORIOが勝機を見出せるとしたら、あきらめずに消耗戦に持ち込んだ挙句に、MADISONがやがて自分自身をコントロール出来なくなって試合を放棄してしまうのを待つ、ただその1点に尽きる気がするのでした。
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