「もうひとつ、あなた、ビザのことがあるから、あんなふうにテレビに紹介されちゃったら、もうたぶん表には出られなくなってるんじゃないかって。それで、もしいるとしたらきっと人目につかない朝早くだろうなとも思ったわ。」
 「MADDIE……」
 「何よ。あらたまって?」
 「おれ、きみがそこまで考えてくれてたってだけで、もう何もいらないよ。」
 「ばかみたい。何もいらないって、まだ何もあげてないじゃない。」

 デイ−ゼルエンジンを響かせて動き始めたタグボ−トが桟橋の突端を横切って行きました。少しの間、振り返ってタグボ−トの様子を目で追っていたMADISONは、やがて静かになるのを待ってから、続けました。
 「それでMORIO、どうしてそんなに危ない思いまでして縫い目を入れ続けていたの?」
 僕は、長くなりそうだなと思ったので、MADISONに隣に座ってもいいか、目で尋ねてから、彼女と並んで桟橋の上に腰掛けました。

   


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