チャイナタウンの入り口で車を降りる時、オーナーから「足りなかったら、ジェラミーに連絡しなさい」と言われて、運転手のモーバイルナンバーの書かれた封筒を渡されました。僕を降ろして勢いよく走り出したジャガーのテールランプが信号の先を左に曲がるのを見届けてから、そのままチャイナタウンを1ブロック歩いて、言われていた『スタジオ69』というネオンサインの下で立止まりました。
 ゆっくりと落ち始めた雨粒が、足元のアスファルトに少しづつ模様を広げていく様子を目で追いながら、その時初めて、

僕はこれから自分がしようとしている事の重大さに気付いたのでした。僕は生まれてから今日まで、お金で女の人を買ったことなどありませんでした。キャシーズでは働いていましたが、ホールで賑やかにした後、みんなが何をしているかなんて全く興味がありませんでしたし、ほんと、言い訳に聞こえてしまうかもしれませんが、ただ掃除した後の鏡や床が輝くのを見るのが好きだっただけなのです。あそこにはいくらでも掃除しなければならないものが、いつでも僕を待っていてくれましたから、たとえ回りで何が起きていても気にならなかったのだと思います。

   


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