オーナーはきっと僕が喜んで偵察に行くと思ったのだと思います。「それじゃ、すぐ支度させるわね。」心の中で躊躇している僕をよそに、そう返事をしたのはドロシーでした。話が急にまとまってしまい、短パンとTシャツではまずいということになり、ホールにいるバーテンダーのユニフォームを借りて、出かけることになりました。バーテンダーのチャーリーは僕よりも全然、上背のあるおじさんでしたので、黒いズボンはすそを折り返して履き、白い長袖のシャツは袖をまくって、また蝶ネクタイは付けないというミミの指示に従って、偵察用の正装は完了しました。

 脱いだTシャツと短パンを休憩室のイスの上にたたんでからホールに戻ってみると、お店の女の子達から口笛を吹かれたり、からかわれたりしました。僕は何だか自分がスターになったみたいで、それにキャシーズを代表しているみたいで、今の自分がとても誇らしく思えてうれしかったです。「MORIO、今日のあなたなら大丈夫だわ。」近づいてきたミミが軽く抱きしめてくれました。「たまには、掃除のこと忘れて、楽しんでらっしゃい。」ドロシーの暖かい声に目で答えてから、外で待っていたオーナーの車に飛び乗りました。 

   


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