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【新型コロナウイルス関連】オーストラリア政府の留学生に対する学生ビザ特例措置


 

新型コロナウイルス感染防止のため事実上、3月から国境を閉鎖しているオーストラリアですが、政府からの支援を受けることができず、就学中にも関わらず自国に帰国を余儀なくされた留学生も多くいたことでしょう。そして、志を曲げずに滞在し続け、リモートで就学を続けた人もいたでしょう。一方、留学を検討していたのにコロナ禍によってプランを変更せざるを得なかった人もオーストラリア海外には多くいたと思います。今回、その人たちにとって少しでも前進する“学生ビザ”に関する特別措置がオーストラリア政府より発表されました。
 
ここでは、パース在住20年以上の移民法コンサルタント(登録移民申請代理人)、鈴木竜一郎さんに7月下旬にオーストラリア政府から発表となった学生ビザの発給再開、および新型コロナウイルスの影響を受けた留学生に対する学生ビザの特例措置についてお話を伺いました。
 
 

<インタビューに応える鈴木竜一郎さん>

※一部写真はイメージです。
 
 
質問:オーストラリアでは国境や州境が閉鎖されているため人の流れは止まっていますが、ビザに関するお問合せも減少してしまったのでしょうか?

鈴木さん:「新規のビザに関しての問い合わせは、ほぼゼロの状態です。コロナ禍以前にプロセス仕掛けていた案件というのはありましたが、それは保留になっていますね。」
 
 
質問:そんな中でも、急を要するビザについてのお問合せはあるんですか?

鈴木さん:「そうですね。現在受けているものは、“日本に帰りたいけれども許可が下りない、どうしたらいいのか?”というものですね。例えば、日本にいる親の具合が悪いから帰りたいというものです。実際に、永住権保持者の方で最初、ビザ発給に時間がかかると思い日本への帰国希望1ヶ月前に申請を出したら却下されたそうなんです。なので、『医者の診断書とか揃える前に容態が急変しそうで、とにかく帰りたい。診断書は場合によっては日本から提出する。今は親の死に目に会いたい。オーストラリアに戻って来れなくていいから』といった感じで再申請したら、3日で許可が下りました。」
 
 
質問:この状況だからこそ申請の仕方には注意を払った方がよさそうですね。

鈴木さん:「もしかしたら、月初めに申請して月末までに許可を下ろしてほしいというのでは、移民局側は緊急ではないと判断したのでしょうね。」
 
 
質問:実際、移民局は稼働しているんですよね?

鈴木さん:「はい、もちろん動いてますよ。前出の急を要するものの審査とかありますので。当然、通常のものも受け付けてはいますが、結局、ビザが下りたところで基本、入国はできませんので。」
 
 
質問:ビザの発給が通常でなければ、将来のプランが立てられない人もいらっしゃるでしょうね。

鈴木さん:「この状況では、プランが組めないでしょう。特に今、日本にいてオーストラリアに行きたいという方で、仕事を片付け、生活面も整理しているとしても入国がいつできるかわからない。仮に年明けに入国ができるようになったとしても、今度は日本が冬になっていて、感染が爆発する可能性だってある。とにかく先が読めない状況だから、計画を組むというのが難しいでしょうね。」
 
 

 
 
質問:3月からのコロナ禍から半年が経とうとしていますが、7月の下旬、スコット・モリソン豪州首相が留学生に対する学生ビザの特例措置について発表しましたが、措置についての内容を教えて頂けますか?

鈴木さん:「まず、現在閉鎖している国境を開いたら直ぐに学生ビザを保有した人たちが入国できるように、新規の学生ビザの発給を再開すると発表しました。」
 
 
質問:なぜ、そのような動きに?

鈴木さん:「海外からの留学生は、言ってみればオーストラリアを支える大きな産業の1つですから、その点に対してインセンティブを出すということでしょう。事実上、観光面よりも留学生の受け入れを優先したのだと思います。留学生を積極的に受け入れている大学もかなりあるので経済面も考慮に入れたのでしょう。」
 
 

 
 
質問:では、他の特別処置は?

鈴木さん:「まず、学生ビザの延長が無料でできることになりました。ビザの更新の費用が無料になるということなので、1,000ドル前後が免除になるということです。あと半年で大学を卒業しようとしていたけど、このコロナ禍中で単位を落としたとか、就学途中なのにビザが切れてしまうという方がこの対象になります。語学学校は卒業できないっていうことはないので、専門学校や大学に行っている学生が主な対象者となるでしょう。」
 
 
質問:就学後就労ビザ(Post-study Work Visa)や書類提出についての特例措置も発表になっていましたね。どのような内容ですか?

鈴木さん:「就学後就労ビザに関しては、このコロナ禍でオーストラリアを出国し、自分の国に戻ってオンラインで勉強していた期間をオーストラリアでの学習期間として認めるといった措置で、また就学後就労ビザは今まで申請時やビザが下りる時にオーストラリアにいなければなりませんでしたが、海外からの申請も可能になりました。そして、英語の能力を測る試験結果の提出期限を延長してくれることになりました。コロナ禍が原因で英語能力試験へのアクセスができない場合など、書類提出に猶予期間が与えらたということです。」
 
 
質問:“学生ビザ発給再開”や“特別措置の施行”は留学生にとっては朗報ですね。

鈴木さん:「確かにそうですね。実は、1997年にイギリスから香港が返還された時、とても多くの留学生がオーストラリアに来たんです。国の情勢が不安定になることを見越して香港の親御さんたちが教育も充実していて国際紛争に巻き込まれにくいオーストラリアやニュージーランドに子どもを留学させたのです。地理的にも香港からオーストラリアへはそう遠くなかったのも良かったのでしょう。今回のこのコロナ禍が少し落ち着いたら、比較的安全でコロナの感染者が最小限で抑えられているパースが人気の留学先になる可能性がありますね。」
 
 

<今回の改正は「留学生を配慮して、豪州政府が経済復興のてこ入れを模索した結果」と話す鈴木さん>
 
 
質問:では、最後にオーストラリアへ留学を考えている人にアドバイスを頂けますか。

鈴木さん:「先にも言いましたが、今は長いスパンで考えていくしかないでしょう。どんなに早くても、新学期が始まる来年の2月からといったプランで動いてみる、といった感じですね。オーストラリアへの入国ができない現状ではまだ予定は立てられないと思いますが、段階を踏んで準備をしておくことは大切となるでしょう。」
 
 
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鈴木 竜一郎

鈴木 竜一郎

Japan Australia Settlements代表
1987年、 早稲田大学商学部卒業。 2000年にカーティン工科大学MBA卒業後、 2001年にエディスコーワン大学会計学修士卒業。
□ 登録税務代理人:25479352
□ 登録移民申請代理人: MARN 1173457
□ ファイナンシャルアドバイザー(AFP)







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