1月20日の水曜日に2020-21シーズンのリーグ初戦を戦ったパースグローリーは、金曜日の夕方のフライトでメルボルンへ移動。そして翌日の23日にメルボルン時間(パースと3時間の時差)の17:05分キックオフでWestern United FCと対戦した。
<Aリーグを知る記者の視点 A League Football Journalist’s Point Of View> 今シーズン(A League 2020-21 Season)から、Aリーグを知る記者の視点から更に詳しくパースグローリーの試合についてお届けする。 |
2020-21シーズンAリーグ パースグローリー試合結果 Matchweek 5
Western United FC 5 – 4 Perth Glory 会場:GMHBA Stadium
昨シーズンのAリーグ2019-20シーズンからリーグに加入したWestern United FC。最初のシーズンながらリーグ5位の成績でファイナルシリーズにも進出。そのチームを牽引したのが、キャプテンでかつマーキープレーヤーの背番号23番、Alessandro Diamanti。元イタリア代表で、イタリア国内でも多くのチームを渡り歩き、イングランドや中国でもプレーの経験があるベテランプレーヤー。
Diamantiはチームや自身にとってデビューだったその昨シーズンに、シーズン最後に贈られる各部門で優秀だった選手を称える「Dolan Warren Awards」における最優秀選手賞(Johnny Warren Medal)を受賞。この最優秀選手賞は投票式で行われるが、Diamantiは34ポイントを獲得し、2位だったSydney FCのMilos Ninkovicを6ポイント差で引き離し、パースグローリーのDiego Castroは23ポイントで4位だった。
また、Western United FCには、2011-12シーズンからAリーグを主戦場とし(2018年にはJリーグのサンフレッチェ広島に在籍)、135ゴール(2019-20シーズンは19ゴール)で現在もリーグ最多得点を更新している背番号7番のBesart Berisha、昨シーズンよりJリーグの松本山雅FCから移籍し、今シーズンで2年目となる背番号6番のDF、今井智基も在籍。そして、現在もAリーグ出場339試合(2019-20シーズンまで)で最多出場記録を更新している背番号22番のDF、Andrew Duranteもこの試合でスターティングイレブンに名を連ねるが、今シーズンはまだ勝ち星がない(1引分け1敗)。
一方、パースグローリーは幸先良いシーズンスタートを切った20日の試合と全く同じスターティングイレブンで臨む。中でも、その20日の試合で注目を集めたのが背番号22番のDF、Joshua Rawlins。16歳でYear 12(日本の高校3年生相当)、先のACL(AFC Champions League)でプロデビューを果たし、ACL最年少プレーヤーとして記録を塗りかえたRawlinsは右のサイドバックとしてポテンシャルの高さを示した。
ただ、当コーナーのレポート「グローリーの2020-21シーズン開幕!果たして初戦の結果は?!」でも触れたが、地元出身の若手選手を多く起用して、若さゆえの爆発力で勝利したとも言えた初戦のAdelaide United戦と同じような試合運びができるのか、もしくは若さゆえの経験不足で、試合を優位にコントロールできずに終わるのか、その点はまだまだ注目したいところだろう。
さて、ホームのWestern United FCのキックオフで試合がスタート。ゆっくりボールを回すWestern United FCに対して、ボールを奪いに行くグローリー。しかし開始10分間、ほぼボールを奪うことができないグローリーにWestern United FCは左サイドから突破。Western United FCの背番号11番、MFのConnor Painがこの試合も注目されていたグローリーのRawlinsを抜き去りクロスを上げる。そのクロスに背番号20番のMF、Víctor Sánchezが対角の右サイドネットにカーブをかけたファインシュートを突き刺し先制する。
先制点を許したことで奮起を期待したいグローリーだが、最初に訪れたチャンスは前半20分。まさに前試合のAdelaide Unitedがグローリー相手に最初に得たチャンスと同じ時間帯、そして展開となる。背番号9番のFW、Bruno Fornaroliのシュートが相手DFに当たりゴールラインを割る。そして得たCKだったが、難なく相手GKにキャッチされてしまった。それ以降も防戦となるグローリーサイドは、早々にベンチが動く。前半38分に背番号24番のMF、Daniel Stynesに代わり、前試合でも途中出場で得点を上げた背番号20番のMF、Carlo Armientoがピッチに立つ。ただ、その効果を残りの5分でチームに及ぼすには少し短かったが、更に後半開始から2人の選手を入れ替えた監督のRichard Garciaは、状況打開のために先手を打つ。
そして、迎えた後半の11分、前半38分に交代で入ったそのArmientoが左サイドでがボールをキープしてFornaroliへ。そのボールをPA内へ走り込んだArmientoへ折り返し、Armientoが左足で一閃。相手GKの右側の狭いコースを突いて見事にネットを揺らした。
ここから狼煙を上げたいグローリーは2分後、またもや左サイドからの攻撃。前半45分でベンチに下がったRawlinsの代わりに背番号37番のDF、Riley Warlandが左サイドに入り(左サイドでプレーしていた背番号23番のDane Inghamが右に移動)、1点目と同様にそのWarlandが攻撃の起点となる。WarlandからのパスをArmientoが受けて、中央にクロスを送る。ゴール前に走り込んだFornaroliがそのボールを相手DFを背にしながら左足で自分の背後に流すようにワンタッチでシュート。トリッキーなそのシュートでグローリーが逆転に成功する。前半45分間、全く良いところのなかったグローリーが選手3人の交代で息を吹き返えした。
<背番号20番のMF、Carlo Armiento(写真左)からのパスを、足をクロスしながら後ろに流し込むようなシュートでパースグローリーに勝ち越しをもたらしたストライカーの背番号9番、FWのBruno Fornaroli(写真左から2人目)。この得点がグローリーにとってこの試合初めての勝ち越し点ではあったが、以後追いつくばかりで二度と勝ち越すことはなかった。*Image from Perth Glory FC>
ここでWestern United FCもこの日精彩を欠いたストライカーのBerishaをベンチに下げて、背番号5番のFW、Dylan Pieriasを投入する。その交代が功を奏す。なんとPieriasのファーストタッチとなるヘディングでWestern United FCは同点とする。2分おきの6分間で3得点が生まれた。
試合は2-2の振り出しに戻り、両チームともにベンチから失点を防ぐための指示が飛ぶ。しかし、Western United FCの勢いは止まらなかった。右サイドの今井からのクロスにまたもやPieriasが右足のシュートで左サイドネットに蹴り込むゴールを上げた。4分後の後半19分だった。
<パースグローリーのシーズン初戦だったMatchweek 4でTeam of the Week(TOTW)に選ばれたグローリーの背番号10番、Andy Keogh。ただ、この試合ではディフェンスに追われるシーンが多く、得点チャンスに絡むことはできず、後半20分にピッチを後にしている。*Image from Perth Glory FC>
しかし、このシーソーゲームはまだまだ続く。3分後の後半24分に、その前のプレーで相手DFに倒され、負傷していたグローリーの背番号18番、MFのNicholas D’AgostinoがFKからのボールを頭で合わせて3-3とした。前試合のAdelaide Unitedとの自身のヘディングシュートと全く同じ形でのゴールとなった。ベンチのGarcia監督が苦笑いする。
<果敢にゴールを狙う、U23オーストラリア代表でパースグローリーの背番号18番、FWのNicholas D’Agostino。シーズン初戦では2得点を決め、この日もグローリーの3点目を頭で決めた。*Image from Perth Glory FC>
後半10分にWestern United FCの左サイド、途中交代で入った背番号8番、MFのLachlan WalesがPieriasの1点目をアシストしたが、Walesがまたも見せる。左から上がり、スルーパスを中央に送る。そのボールをこの日、本職のDFではなく下がり目の右MFでプレーした今井の足元に。冷静にトラップして、右足を降り抜いた。ボールはグロリーのGK、背番号33番のLiam Reddyが構える位置よりも高いところを射抜き、ネットを揺らした。今井にとっては嬉しいAリーグ初得点となった。
<後半25分にWestern United FCの2度目の勝ち越し点を上げる背番号6番、DFの今井智基。Jリーグの松本山雅FCから移籍し、今シーズンはWestern United FCの2シーズン目となるが、Aリーグ初得点となった。*Image from Perth Glory FC>
しかし、2度目の勝ち越しで喜ぶWestern United FCの歓喜はそう長く続かなかった。3分後、グローリーが3度目の同点へと持ち込む。背番号88番のMF、Neil KilkennyからのFKのセカンドボールをこの日、1得点1アシストのArmientoがペナルティエリア中央から利き足の左足を振る抜く。これで4-4。
さて、残り10分でどちらへシーソーが傾くか!?
後半39分、Diamantiの左CKに競り合う両チーム選手。こぼれ球は力なくPA内に転がる。そのボールを満を持して行方を見守っていた背番号10番のSteven Lusticaが右足を降り抜く。ボールはリフレクションとなり、無情にもReddyの反対側に転がった。3度目の勝ち越し成功にWestern United FCの選手やベンチ、スタジアムはこれ以上になく湧く。
90分の試合が終わり、アディショナルタイムは7分。この試合の流れではまだまだグローリーの追いつくチャンスはある。ただ、満身創痍の両イレブンの足は止まりかけている。時間稼ぎをしたいWestern United FCと、少しでも早くボールをゴール前に運ばせたいグローリー。ただ、この日の勝利の女神はホームチームに微笑んだ。
打ち合いの試合を制したWestern United FC。試合後のカンファレンスで、試合中に大きな声で指示を出し続けたGarcia監督は水を口に何度も運びながら、失点の要因について聞かれ「DFの改善も必要だが、他のチームより得点を取っている」と多くの失点についてはネガティブなコメントを残さなかった。また、2人の外国人DF選手(太田宏介とSebastian Langkamp)について質問が及ぶと「1人(太田)は検疫中、もう1人(Langkamp)は(パースへは)これからだが、今はここにいる選手たちと残りのアウェイ連戦にフォーカスを当ててやっていく」と気丈に答えた。
文:今城康雄(いまなりやすお)。パースの日本語メディア「The Perth Express」の代表兼、編集長。2005年のAリーグの開幕以来、リーグ公認のメディアとなっている「The Perth Express」のジャーナリストとしても、パースグローリーのホームゲームはほぼ全試合、記者席より取材を重ねてきた。2020年よりパースグローリー日本地区担当マネージャー兼任。
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