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【速報】違いを見せるには30分で十分だった。元日本代表の左DF太田宏介!


 
パースグローリーのDF、背番号8番の太田宏介がBrisbaine Roar戦でAリーグデビューを果たす。試合当日の正午、パースグローリーのオフィシャルツイッターに『8.Kosuke OTA has been added to the Glory squad for tonight’s game against Brisbane Roar』といったツイートが上がった。この“つぶやき”に「まさか!」と思った人も多かったはず。オーストラリアに入国して2週間のホテル検疫後、パースのロックダウン、そしてアウェイゲームから帰ってきた本隊の自主隔離で、チームメイトと顔を合わせたのが20日の土曜日だった。今日が26日の金曜日。まだ一週間も経っていないのに太田はベンチメンバーに名を連ねた。
 

<Aリーグを知る記者の視点 A League Football Journalist’s Point Of View>
今シーズン(A League 2020-21 Season)から、Aリーグを知る記者の視点から更に詳しくパースグローリーの試合についてお届けする。

 

2020-21シーズンAリーグ パースグローリー試合結果 Matchweek 10
Perth Glory 3 – 1 Brisbaine Roar 会場:HBF Park

 
 
試合後のZoomの記者会見でジャーナリストが「太田をピッチに送り込んだのは賭けだったのでは?」という質問が飛び出したが、前所属先の名古屋グランパスエイトでの別メニューによる練習以来ほぼ4ヶ月も実践から離れていた太田にとっては、それが賭けなのか、そうではないのか本人が一番知っていた。

単調な試合内容から前半40分に背番号17番でグローリーのキャプテン、Diego Castroが左サイドで切り返し、右足を振り抜いたボールがサイドネットを揺らす。しかし、Castroの個人技で得た得点では試合の流れを変えるに十分ではなかった。前半アディショナルタイムにBrisbaine Roarに追いつかれる。

前半の悪い流れを変えたいグローリーはすぐさまベンチが動き、後半開始10分には早くもベンチメンバーがアップを始める。ただ、太田の頭には“自分の出場は残り5分~10分程度だろう”と予想していた。ベンチ横の芝の上でひとりゆっくりとスパイクの紐を結び直し、足首にテーピングを巻く。そして、すでにアップを始めている他のベンチメンバーを横目に、一度ドレッシングルームに姿を消した太田を用具スタッフがつかまえた。「ストッキングの白の部分をもう少し隠せと審判が言っている。テープで隠して、70分に入るぞ。65分にウォームアップを開始」といきなり。「入る?後半25分に?」と聞き返す太田。予想していたプレー時間より倍も長い、20分間。

今度は、ドレッシングルームからピッチに戻った太田を待ち構えていたトレーナーが慌てて「アップをしろ!」と指示を出す。時計はまだ55分。今しがた言われたアップ開始時間よりも、10分も早い。

しかし、慌てることなく笑顔で「もう出番が回ってきましたかね?!」と言いながらアップのグループに加わる太田。するとベンチの方からアシスタントコーチのSteven McGarrが大声で「こっちに来い!」と呼ぶ。控えだった4選手がアップ用の上着からユニフォームを纏う。太田もその一人だった。時計は試合開始から60分。つまり、残り試合時間は30分。「自分サイドでのスローインは全てコウスケ。フォーメーションを再確認しろ」と言われ、ファイルが手渡される。監督のRichard Garciaからは「まずは試合に順応してきてほしい。(お前には)それができる!」と背中を叩かれた。

そして、背番号8番はオーストラリアAリーグのデビューを果たす。ファーストタッチはDFとのボール回し。スローインから味方選手とパス交換や、相手FWの突破をスライディングで阻止するなど、“インターナショナルプレイヤー”としての期待に十分に応え、スタジアムが湧く。

ただ、それだけでは終わらなかった。ピッチに立って7分後。背番号88番のMF、Neil Kilkennyのパスを太田がダイレクトで背番号9番のストライカー、Bruno Fornaroliに絶妙なパス。そのパスをFornaroliがハーフボレーで仕留め、グローリーが勝ち越しに成功。いきなり、太田はアシストを記録した。日本でもDFのアシスト最多記録をもつ太田自身にとってはいつもと変わりないラストパスだったかもしれないが、環境のことなった異国の地での初アシストは異なった味わいだったに違いない。

4人の選手交代と、この2点目で試合の流れはグローリーへと傾く。そして、さらに7分後。左サイドで弧を描くようにオーバーラップしてきた太田は足元に流れてきたパスをダイレクトでゴール前へ折り返す。その鋭いクロスは一度、相手GKにはじかれるも、Castroの足元に。Castroは冷静に左足でそのボールをゴールに突き刺した。GKが触らなければこのパスも“太田のアシスト”と公式に記録されただろうが、Aリーグのオフィシャルサイトでは「The debutant had two assists to his name just 15 minutes later」と称された。


 
【試合結果】
Perth Glory 3-1 BRISBANE ROAR

得点:
<Perth Glory>
Diego Castro(40分)
‎Bruno Fornaroli(68分)
‎Diego Castro(75分)‎
<BRISBANE ROAR>
Jack Hingert(45‎+‎4‎分)
 
 
文:今城康雄(いまなりやすお)。パースの日本語メディア「The Perth Express」の代表兼、編集長。2005年のAリーグの開幕以来、リーグ公認のメディアとなっている「The Perth Express」のジャーナリストとしても、パースグローリーのホームゲームはほぼ全試合、記者席より取材を重ねてきた。2020年よりパースグローリー日本地区担当マネージャー兼任。
 
 
【参考】
関連記事:本日発表!元日本代表の太田宏介選手がパースグローリーと契約!

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関連(外部リンク):太田宏介オフィシャルインスタグラム

関連(外部リンク):太田宏介オフィシャルブログ

関連(外部リンク):太田宏介オフィシャルツイッター







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