【Image from Kayo Sports Screenshot】
悪天候で一部のピッチには水溜まりもできていた。延期も検討されたが、30分間開始時間が遅らされた後に試合はスタートした。横殴りの雨の中、パースグローリーの背番号8番、左DFの太田宏介は前節に続いてスターティングメンバーとしてピッチに姿を現した。
<Aリーグを知る記者の視点 A League Football Journalist’s Point Of View> 今シーズン(A League 2020-21 Season)から、Aリーグを知る記者の視点から更に詳しくパースグローリーの試合についてお届けする。 |
2020-21シーズンAリーグ パースグローリー試合結果 Matchweek 12
Central Coast Mariners 2 – 2 Perth Glory 会場:Central Coast Stadium
グローリーは3連勝の後、3月2日のホーム戦でリーグトップだったCentral Coast Marinersにまさかの黒星。その試合後に太田は「負ける相手ではなかった」とコメントを残している。その試合から2週間も経たないうちに同じ相手とアウェイでこの日、戦った。2日の試合ではコンディションを考慮して途中出場だったが(太田にとってはAリーグ2戦目)、フロントサイドの強い要望より前節からスタメンで出場(65分間プレー)、そして今節もスターティングイレブンの一人としてキックオフの笛を聞く太田。
Marinersには、パース生まれのパース育ち、グローリーでAリーグデビューし、当時15歳のリーグ2番目の若さでデビューとなった背番号10番のDaniel De Silvaがいる。2015年にはイタリア・セリエAの強豪、AS Romaとの移籍話(移籍完結ならず)も挙がったほど注目を集めていた逸材だったが、そのDe Silvaが今シーズンのMarinersの原動力となり、リーグ首位をキープしている。
そして、そのDe Silvaによってグローリーの右DF、背番号23番のDane Inghamが前半16分にイエローカードをもらう。ただ、足元が滑り、視界も悪い中、不用意なファールをもらわない細心の注意が必要なのにInghamは同じ相手のDe Silvaと23分にも接触し、あわや2枚目のイエローカード、つまり退場処分すれすれの綱渡りを演じる。試合後の電話インタビューで、太田は「右サイドのDaneが2枚目のイエローをもらわないためにも後半はDaneが(Nicholas Sullivanに)交代させられた時点で、この試合はフルでの出場かなと覚悟はしてました」と話している。
試合は前半25分にMarinersが先制する。この日、背番号1番のGK、Tando Velaphiに代わりゴールマウスを守った背番号33番のLiam Reddyの股を抜けるシュートが、雨で濡れるネットを揺らした。
しかし、この日のグローリーは太田とセンターバックの2選手との連携などからMarinersに決定的なシーンを作らせない。むしろ前半39分には太田のクロスを相手DFがCKに逃げ、そのCKを自ら太田がけるなど、後方からのビルドアップで攻撃に厚みをかけていった。その結果、41分にグローリーが同点に追いつく。
試合は振り出しになり、後半を迎える。Fox Sportsの解説者がハーフタイムに「太田のクロスをもっと多様すべきだ」といったコメントを残していたが、ピッチのコンディションを考慮するればなおさら正確無比な太田のキックは相手の脅威となる。今まで、CKは背番後88番のMF、Neil Kilkennyが全てけっていたが、この試合から右からのCKは太田が任されたのも当然のことだった。
また太田はこの日、体を張ったディフェンスで左サイドからの相手の攻撃を阻止。Marinersのストライカーで背番号19番のMatt Simonの挑発にも冷静に交わし、チームメートのDF、背番号29番のDarryl Lachmanが代わりにイエローカードをもらうシーンもあったが、それらの堅守が実り、後半から入った背番号18番のNicholas D’Agostinoが76分(後半31分)に勝ち越し点を奪う。
これによりホームのMarinersが前のめりの攻撃で反撃に出る。しかし、引き続きの堅守でその攻撃を跳ね返すグローリー。太田も幾度のスライディングで、濡れたピッチを滑りながら攻撃の芽を摘む。
手元の時計で試合時間は残り5分。後半から入った背番号16番の右SB、Nicholas Sullivanが裏を取られ、簡単にクロスを上げられてしまう。そのクロスのセカンドボールにグローリーの背番号13番、この試合がAリーグデビュー戦だったLuke BodnarとMarinersのSimonがヘディングで競り合い、2人はその場に倒れ込んだ。
MarinersはPKを要求。審判はVARでその要求をのみ、PKの判定を下した。試合後の記者会見でグローリーの監督、Richard Garciaは「頭同士の接触でPKの判定が出るのは今まで聞いたことがない」と断言していたが、そのPKを倒れた本人、Simonが蹴り込み、土壇場でMarinersが同点とした。そして、勝ち点を分け合って試合は終了。
ホテルに戻った太田は電話口で「今日は守備重視で攻撃参加は無理しない程度に、バランスを崩さないようにプレーしました。捉え方一つですが、勝っていた試合を取りこぼしたのではなく、アウェイの試合で勝ち点1を取ったと考えたいです。そして、次が大切になります。次の試合で勝ち点3をしっかり取って、パースに戻りたいですね」と話す太田。
また「前節で、初めてオーストラリアでのアウェイの移動や試合を経験しているので、今回は大丈夫でしょう。パースに戻らずこのまま金曜日(19日)の試合までホテルにステイし続けますが、身体をケアしながら次に臨みます。正直、前節の時のホテルより今回のホテルはベッドも大きいですし、食事も良いので(笑)」と笑声を交えながらの返答ではあったが、太田の見据えている先は既に次の試合だった。
【試合結果】
Central Coast Mariners 2 – 2 Perth Glory
得点:
<Central Coast Mariners>
Marco Ureña(25分)
Matt Simon(90分+1分)
<Perth Glory>
Bruno Fornaroli(41分)
Nicholas D’Agostino(76分)
文:今城康雄(いまなりやすお)。パースの日本語メディア「The Perth Express」の代表兼、編集長。2005年のAリーグの開幕以来、リーグ公認のメディアとなっている「The Perth Express」のジャーナリストとしても、パースグローリーのホームゲームはほぼ全試合、記者席より取材を重ねてきた。2020年よりパースグローリー日本地区担当マネージャー兼任。
【参考】
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