【前回までのあらすじ】
沢田百々子、45歳。サンフランシスコの病院をやっと退院して日本へ帰国できる前日、昔の同僚と夕食の約束をする。食事まで少し時間があったので、病院のエントランスを出て散歩しようとした百々子に…。
沢田百々子、45歳。サンフランシスコの病院をやっと退院して日本へ帰国できる前日、昔の同僚と夕食の約束をする。食事まで少し時間があったので、病院のエントランスを出て散歩しようとした百々子に…。
第31走者
悪魔のストーカー
気がついたら、車の中だった。百々子は何故、自分が気を失っていたのかわからない。口にはハンカチが押し込められていて、手は後ろ手に結束バンドで縛られていた。両足はナイロンの紐のようなものでぐるぐる巻きにされ、動かないようになっている。
かすんだ視界がくっきりし始めた頃、低い声の「もう、大丈夫だよ。俺がついているから」が耳に入ってきた。そして、目線の先の助手席には、なんとRisaの姿があった。ストーカー行為を働く恩田正平の妻、Risaがなぜそこにいるのか、百々子を混乱させた。
車は停まり、正平が後ろを振り向いた。「僕から逃げようとした罰だよ」と抑揚なく言うと、「私はあなたが憎かった」とRisaがフロントガラスを見ながら言った。「正平の愛はあなたに注がれていた。私ではなく、あなたに。そして、それを受け止めないあなたに心から憎しみを感じていた」と言い終えると、Risaは体勢を変えて百々子に強い視線を当てた。
不思議と生命の危険は感じなかった百々子。ただ、逃げることは叶わないとも思った。手足は動かない。話すこともできない。瞬間的に2人の感情を逆立てないことが先決と判断し、乞うような目で2人を見ながら、今、自分は何をすればいいのか必死で考えた。入院中に精神的な強さが戻ってきたことも自覚していた百々子は、2人が次に何をしてくるのか見守ることに決めた。
自分にストーカー行為を行なった正平が原因で、百々子はサンフランシスコの病院に入院していた。その正平が、百々子を退院当日にさらった。ただ、百々子はサンフランシスコに戻ってきたばかりの百々子とは違っていた。
第32走者へ続く
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