今回は、2名の投稿者の複数掲載とさせて頂きました。
沢田百々子、45歳。不安障害と診断された百々子は、薬物治療のためにサンフランシスコの病院にいた。抜け出したくても思うように身体が動かない。そんな時、病室に真っ赤なバラの花束とカードが届く。
第28走者
筆者:パース
百々子さん、パースでは夏が終わろうとしているよ。日差しも弱まり、風も穏やか。空は高く、緑も色濃くなってきました。Hayストリートのバックパッカーズも、Mt. Lawleyのカフェでパソコン片手にコーヒーを飲んでいたのも懐かしいでしょうね。頑張って、今すぐサンフランシスコを出なさい。15年前にパースで受けたストーカー行為、記憶から消したいでしょうけど、またパースにいらしたらいかがでしょうか。いろいろなことを修復しながら、心を落ち着かせに来られたら…。
第29走者
筆者:TAKA
カードを開いた。直筆だった。
僕はRisaと結婚したけど、この間、ホテルのロビーで君を見かけ、君への想いが蘇ってきた。Risaには内緒でこの手紙を書いている。
バラ、気に入ってくれたかな。
体調が回復して、退院したら会いたい。君にしたことをちゃんとお詫びしたいんだ。そして、本当の僕を見てもらいたい。
胸が苦しくなって、呼吸ができなくなった。続きが読めない。吐き気に襲われ、トイレに駆け込むも、胃からは何も出なかった。トイレの床に座り込む百々子。
看護師が、バラを生けた花瓶を持って病室に入ってきた。トイレに倒れこむ百々子を見るなり、すぐに抱きかかえてベットへ戻す。そして、枕もとのボタンを押した。
気がつくと、真夜中だった。気を失っていたのだろう。頭の中では霧の中を彷徨う少女を見ていた。そのまま霧は晴れないのか。百々子の精神状態はある一線を越えそうだった。
百々子にはまだ目を通すことができていない手紙の続きは、こう書かれていた。
サンフランシスコで最初に会ったときのこと、覚えている?失恋した君は僕が必要だった。君もそう言っていた。あのときの二人に戻りたい。
とにかく今は、早く良くなってほしい。 正平
第30走者へ続く
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