【前回までのあらすじ】
沢田百々子、45歳。車内で拘束されていた百々子だが、恩田正平の涙から状況は一変した。結束バンドを外してもらった百々子は逃げることよりも、正平のことが知りたくなった。
沢田百々子、45歳。車内で拘束されていた百々子だが、恩田正平の涙から状況は一変した。結束バンドを外してもらった百々子は逃げることよりも、正平のことが知りたくなった。
第41走
しげ
正平の手から力が徐々に感じられるようになった。そして、百々子は正平の気持ちを逆撫でないように「なんでこんなことをしたの」と聞いた。力なく正平はポツリ、ポツリと口から言葉を落とすように話し始めた。
「愛されたかった。愛されなかった現実から目を背けてきた。俺が小学4年の頃、親父が家にあまり帰らなくなった。大好きだった親父の姿を見る機会が減って、お袋が寂しそうだった。そんな親父が真逆に大嫌いになっていった。でも、心のどこかで親父の、あの手のぬくもりが忘れられなかった。お袋も弱くなっていき、家族の絆はもうなくなっていた。叱る、叱られる、怒る、怒られるといったこともなくなり、お袋とは自由なようで自由でない関係が始まった。そして、無感情の関係は俺がアメリカに行くまで続いた」
話を聞きながら、外の様子が変わりつつあることを百々子は感じ取っていた。
第42走者へ続く
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