【前回までのあらすじ】
沢田百々子、45歳。サンフランシスコの病院に入院中、バラの花束が届き、そこに挟まっていたカードには百々子には身に覚えのないことが書かれていた。
沢田百々子、45歳。サンフランシスコの病院に入院中、バラの花束が届き、そこに挟まっていたカードには百々子には身に覚えのないことが書かれていた。
第30走者
力矢
百々子の体調は徐々に回復し、晴れて退院の日がやってきた。すぐに日本へ帰りたかったが、15年前に働いていた会社の同僚がまだサンフランシスコにいて、「会おう」と声をかけられた。当然気が乗らなかったが、当時お世話になった同僚なので、その晩その家に泊めてもらうという条件で会うことにした。誰かが自分の周りにいてもらった方が良いという都合にも適当だった。飛行機は翌日の夕方の便を押さえていた。
街の中心のイタリアンレストンで食事をすることになり、現場集合といった案内とそのイタリアンレストランの住所がメッセージで送られてきた。待ち合わせの時間まで、まだある。病院の正面玄関からタクシーに乗って、そのレストランへ直接行くつもりだったが、空いた時間を病院から一度出て、散歩でもしようとか考えた百々子は、体調の回復と退院といったことが自分の身を少しだけ軽くしたのだろう。
だが、その少しが迂闊だった。一瞬のうちに百々子は左手首をつかまれ、進行方向とは真逆に引っ張られた。非常に強い力だったので痛みが伴い、体のバランスも崩した。首を回転させて、その力の方に目をやった。
恩田正平だった。無表情で、目は死んでいた。古めかしさを感じる身なりは、パースでの恩田正平ではなかった。百々子は、今までに感じたことのない冷たい殺気のようなものを感じた。
第30走者へ続く
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