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【パースエクスプレス・マガジン】第26回 パースパノラマパズル リレー小説


 

【前回までのあらすじ】
沢田百々子、45歳。パースで百々子にストーカー行為をはたらいた恩田正平は、サンフランシスコでも百々子を拘束した。後部座席で自由を奪われた百々子の横に正平、そして助手席には正平の妻、Risaがいる。

 


 
第34走者
謙三
 
突きつけられた拳銃に一瞬息をのむ恩田正平だが、次の瞬間、目線を足元に落としながら「Risa、僕は君の気持ちを知っているよ。悪ふざけはやめようよ」と言った。
 
助手席に座っていた正平の妻、Risaはリュックサックから拳銃を取り出し、銃口を夫の正平に向けた。体をひねり、右手に持たれた拳銃は左右小刻みに震えていた。その震えが意図することを正平は正平なりに感じ取ったのだろう。
 
「一時的な感情でそんなことをするもんじゃないよ、Risa。僕は、Risaのことも愛している。3人で幸せになろうと思っている。難しいことではないはずだ」と言いながら顔をゆっくり上げ、きりりとした視線で銃口先のRisaをにらんだ。
 
百々子には分かっていた。Risaの思いが恐怖ではなく、憤りだということを。震えは恐ろしさからではなく、怒りからのものだということを。Risaは本気で引き金をひくつもりだと思った。“Risaを人殺しにしてはいけない”ととっさに思った百々子は、2人の注意を反らすため、渾身の力で腰を上げ下げしながら両足をシートの上でバタつかせた。
 
驚いた正平は、百々子の両足を抱え込むように抑える。膝が正平の顔を蹴り上げた。そしてRisaが「動かないで!」と正平に怒鳴り付ける。銃口はまだ正平へ向けられていた。全てが一瞬だった。ただ、百々子には夢の中のスローモーションのようなの出来事だった。気が付くと、フロントガラス越しに点滅している赤と青のライトが目に差し込んでいた。

 
 


 

第35走者へ続く

 
 
 

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