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【再起の光 NPLからAリーグへ】 Aリーグ2024-25年シーズン開幕。前半45分で屈辱の交代

Aリーグ2024-25シーズンが開幕した。オーストラリアのパースに本拠地を構えるPerth Gloryの初戦は、10月20日のアウェイゲーム、対Macarthur FC戦だった。結果は6-1の完敗。Aリーグデビューの背番号11番、青山景昌にとっては酷な結果となった。
 

シリーズ 【再起の光 NPLからAリーグへ】
2005年のAリーグ開幕から“パースエクスプレス”では、コーナー『パースグローリー 栄光への道 The Glorious Road』でPerth Gloryの戦績をレポートしてきたが、今シーズンは当コーナー内にてシリーズ 【再起の光 NPLからAリーグへ】と題し、同チーム所属の青山景昌選手にもフォーカスを当てながらPerth Gloryの試合結果などを報告する。

 


【再起の光 NPLからAリーグへ】

※インタビュー:2024年10月16日


© Perth Glory

Perth Gloryの背番号11番、青山景昌(あおやまひろあき)。日本ではJ3で2シーズン、その後、オーストラリアのNPL(National Premier Leagues/オーストラリア2部リーグ相当)では2シーズン半、プレーした。そして2024年の今年、J1相当のAリーグ、Perth Gloryと契約を交わす。

NPLのトップチームからAリーグに昇格して、契約を勝ち取った選手は数少ない。外国人選手となればビザの関係で更に狭き門となる。

Aリーグ公式ウェブサイトやインスタグラムでは「NPL ace turns trial into dream A league contract(NPLのエースがトライアルから夢のAリーグチームと契約)」といった表現で青山選手のPerth Gloryとの契約を報じた。Dreamという言葉を使っていることからも簡単なことではないことがわかる。

リーグ開幕戦を4日後に控えたトレーニング室で、青山選手にプロに成る前のことからJ3、そして渡豪、NPL時代について伺った。ただ、NPLからAリーグへと話題が移り変わると、多くの人が成し遂げられなかった、しかし青山選手は契約を勝ち取った理由の一端を垣間見た。

質問:Perth Gloryと契約した時の率直な気持ちは?
「契約できた時は嬉しかったです。単純に、(日本の)J3からAリーグなので。J3でも9試合しか出ていない選手が…。」

質問:そのPerth Gloryでの意気込みは?
「けがなくシーズン通してプレーしたいと思っています。登録選手が多いので、自分の特徴を活かして(レギュラーとして)試合に出続けたいですね。そして、結果を残したいです。」

質問:“NPLからAリーグ”の昇格は自信となりますか?
「NPLからAリーグに上がった選手は、ほぼいないと聞いています。ただ、それが自信につながるかと言われたら、そうではないですね。むしろ、これから来る日本人選手に(Aリーグまで)つなげるように自分が活躍しなければと思います。もし、自分が活躍できなかったら、“やっぱり、NPLからだったもんね”となるので。そうは思わせたくないですね。」

質問:日本という国旗のようなものを背負っていますか?
「NPLの2年半で、外国人枠については学びました。ビザ・プレーヤーが頑張らないとダメですからね。とにかく“NPLから上がって凄い”で終わっては意味がない。自分のような(NPLからAリーグという)流れを切らさないためにも頑張ります」
 

近年、プレーの場を求めて日本からオーストラリアへ渡り、国内各州のNPLでプレーしている選手が急激に増えた。その選手たちも上のレベル、つまりAリーグでの出場機会を狙っている。その彼ら、つまり後進の期待を潰したくないと青山選手は考えている。

プロの世界は時にエゴが必要。ただ、そのエゴを越え、後進まで考えが及んでいることは余裕を生み、プレーの幅を広げ、見るものを魅了させ、それが契約を手繰り寄せたのかもしれない。


 


 
さて、Aリーグチームと契約といったその狭き門をくぐり抜け、しかも青山は2024-25シーズンのPerth Glory開幕戦(Round 1)のスタメンに名を連ねた。しかし、試合結果はさんざんだった。青山本人にとっても前半45分間での交代は、まさに試練だったに違いない。

ホーム開幕戦(Round 2)はホームグラウンドのHBF Parkで、10月26日(土曜日)の6:45pmキックオフとなる。Perth Glory、そして青山にとって巻き返しとなるか?!
 

【試合結果】

Isuzu UTE Aリーグ2024/25シーズン(Round 1)
Macarthur FC 6 – 1 Perth Glory (前半:5 – 0)

得点:Macarthur FC(7分Jed DREW、10分Jake HOLLMAN、21分Tomislav USKOK、30分と45+1分Marin JAKOLIS、61分Valere GERMAIN)/Perth Glory (73分Adam BUGARIJA)

 

【10月と11月の試合日程】

(Round 2) Wellington Phoenix FC
10月26日(土曜日) 6:45pmキックオフ 会場:HBF Park(★)

(Round 3) Central Coast Mariners FC
11月2日(土曜日) 2:00pmキックオフ 会場:Industree Group Stadium

(Round 4) Melbourne City FC
11月10日(日曜日) 5:45pmキックオフ 会場:HBF Park(★)

(Round 5) Western United FC
11月22日(金曜日) 2:30pmキックオフ 会場:Allianz Stadium

(Round 6) Adelaide United FC
11月29日(金曜日) 4:35pmキックオフ 会場:Coopers Stadium

※(★)はホームゲーム、時間はパース時間。
 

<プロフィール>

青山 景昌(あおやま ひろあき/Hiroaki AOYAMA)
1996年10月14日生まれ。愛知県津島市出身。169㎝/65㎏。ポジション:MF/FW。サッカー歴:津島SSS→名古屋グランパスU12→名古屋グランパスU15→名古屋グランパスU18→中央大学→びわこ成蹊スポーツ大学→福島ユナイテッドFC(J3)→Blacktown City FC(NSW州National Premier Leagues:NPL)→Marconi Stallions FC(NSW州NPL)

 
津島SSSでサッカーを始める。小学校6年生で名古屋グランパスのユースチームU12に加入。そこから高校3年生まで、U15、U18でプレー。U16の時は日本代表入り。2015年に名古屋グランパスのトップチーム昇格を逃すも、中央大学入学。翌年、びわこ成蹊スポーツ大学に編入後、2年生から背番号10番を背負い、チームの中心選手として活躍。3年生の時は関西選抜に選出。大学卒業後、2020年から2シーズンに渡って福島ユナイテッドFC(J3)でプレーするも、兼ねてから海外でプレーしたいという想いを実現すべく渡豪を決心。コロナ禍が沈静し、オーストラリアの国境が開いた2022年1月にシドニー入りし、NSW州NPLのBlacktown City FCで練習参加、本契約へ。チームはファイナルシリーズで優勝。2023年は同州NPLのMarconi Stallions FCへ移籍。1シーズン半を過ごし、2023年シーズンはチームにおける年間最優秀選手と選手が選ぶ年間最優秀選手の二冠を獲得。そして、2024年シーズン途中でPerth Glory(Aリーグ)と契約。7月17日に正式に発表となった。


© Perth Glory

 


【文】 今城康雄(いまなりやすお)。パースの日本語メディア「The Perth Express」の代表兼、編集長。2005年のAリーグの開幕以来、リーグ公認のメディアとなっている「The Perth Express」のジャーナリストとしても、パースグローリーのホームゲームはほぼ全試合、記者席より取材を重ねてきた。また2020年は、パースグローリー日本地区担当マネージャー兼通訳として太田宏介氏をサポート(関連記事はこちら)。2022年にはWA州のNPLで活躍した今田海斗氏の通訳も行う(関連記事はこちら)。


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