「石田と三浦の記者会見」
 

11月19日の土曜日、シドニーFC対パース・グローリーFCの試合がシドニー時間の午後8時に開始してから、もうすでに3時間が経とうとしていた。カンファレンス・ルームは、日本人メディアでごった返している。そして、三浦知良選手(以後カズと略称)と石田博行(以後石田と略称)が揃って入室してきた。

まず、シドニーFCの広報担当が「カズ・ミウラとパース・グローリーのヒロ・イシダです」と2人を紹介する。そして、記者陣は一斉に2人に目を向けた。しかし、理由はわからないが誰も質問を投げかけようとしない。室内が緊張に包まれ、恐らく2、3秒の沈黙が2分、3分にも思えた。その空気を「どうぞ!」と言って、カズ自身が壊した。

Q:前半オフサイドになって、幻のゴールとなりましたが、あそこのところで1点決められればと思われましたか?
カズ:いや、別にないです。まぁ、オフサイドかなって思いましたので。
本誌記者:77分というのは、ご自分の中で長かったですか、短かったですか?
カズ:ちょっと長かったですね。もうちょっと早く交代するかなと思っていましたので。
本誌記者:リトバルスキー監督は先程の記者会見で90分いけるなら、90分間プレーをしてほしかった、といった内容のコメントを残されましたが。
カズ:いや、もう、ガス欠でした。
本誌記者:石田選手は、まだ足の方が本調子のようではなさそうですが、いかがですか?
石田:そうですね。怪我で3週間休んでいたので。今日が復帰戦でしたが、自分自身としては少しでも出場できたので良かったと思います。
Q:時間がずれてしまいましたが、できればカズ選手と一緒のピッチに立ちたかったですか?
石田:はい、やりたかったですね。
本誌記者:Aリーグではカズ選手よりも石田選手の方が先輩になるわけですが、オーストラリアのサッカーはどういった特徴があるんですか?
石田:身体が大きい分、フィジカル的に強いですね。その代わり、足元はそう上手くはないかもしれません。
本誌記者:カズ選手は、どのような印象を持たれていますか?
カズ:そうですね…、最後の所ではちゃんと身体を張って止めてきますね。中盤でやらせてくれることもありますけど、最後のラインではしっかりとしたディフェンスをしていると思います。
本誌記者:今日の試合でパース・グローリーの背番号2番、Matthew Horsleyと競る場面がありましたが、体格の大きい選手への身体の使い方についてはどのようにお考えですか?
カズ:スタイルが違いますので、日本人の持っている良さと、オーストラリア人が持っている良さというのは違います。僕らみたいな身体にも、良さもあると思います。ターンにしても、小刻みな動きにしても。こちらにはそういうタイプの選手は少ない、というか、ほとんどいないので。そういう意味では、相手もやりにくい部分はあったのではないかなと思います。
Q:前半はかなり中盤に戻ることが多かったようですが。
カズ:監督から「好きにやってもいい」といった指示も頂きましたし、「あまり下がりすぎなければ、中盤まで下がってどんどんボールを触れ」「ボールを触って、自分のリズムを作れ」と言われていました。自分も先発を言い渡された時に、積極的に動いていこう、60分間、または前半だけで終わってもいいつもりでやっていました。そういう意味ではたくさんボールに触れられたのではないかなと思います。
Q:ゴール前では自分でシュートというより、人にパスをするといったシーンが多かったと感じますが。
カズ:いつも必ず2つ、3つのオプションがあるかと思います。前半も後で考えれば(シュートを)打てたかなというシーンはありましたが、一番良い形は、サショー(背番号11のSasho Petrovski)にパスを出すといった自分の判断がありましたし、後半もコンビネーションからのワン・ツーで抜け出したのがあったかと思いますが、あの時も自分の判断です。中盤と前とのコンビネーションがもっと良くなれば、(パスを)出す時もあれば、自分で(シュート)を打つという状況が増えてくると思います。まだまだ、チームの調子がそれほど良くないということなので、中盤からの組み立てで前線に良いボールが入ってきてないんじゃないかなと思います。
Q:後半、ヨーク選手(背番号19のDwight Yorke)が中盤に入ってきて、パス交換をすることがございましたが、お2人で良いリズムが作れていたのでは。
カズ:そうですね。ワン・ツーのコンビネーションを組み立てるのが好きな選手だと思いますので、そういう意味では、何回か中盤で絡めたんではないかと思います。ただ、あのようなコンビネーションをゴール前で出せるようになれば、相手ももっと怖かったと思います。
Q:今日、試合前にヨーク選手とお話はされましたか?
カズ:ワールドカップ出場おめでとう、と言いました。
本誌記者:昨日の会見ではカズ選手は石田選手のことをあまり存じてないとお話されていましたが、石田選手はカズ選手と日本で同じピッチに立たれたことはあるんですか?
石田:自分が清水エスパルスに契約して、2試合目のヴェルディ戦の時、カズさんがベンチに座っていました。ちょうど、マルコメというか…、髪を短くされていた時でしたね。最初はわからなかったんですが、チームメイトに「あれがカズだよ」と教えられ「おぉ」と思いました。
本誌記者:石田選手はその時、試合には出られたのですか?
石田:15分ぐらい出ました。
本誌記者:その時は、カズ選手と一緒のピッチに立たれたのですか?
石田:いや、立っていませんね。

質問が途切れた。すかさずカズ自ら上段にいた顔見知りの記者に向かって「何もない?」というカズの一言に、その記者は「初戦の後に『初戦としてはあれで満足している』とおっしゃっていましたが、今日の2戦目、初めてスタメンに入り、今のお気持ちは?」といった質問に「結果は引き分けで、2ポイントを落としてしまったという感じはあるんですが、今日は充実感があります。75分ぐらい出ましたし、自分らしいプレーが随所にありましたので、充実感はあります。ただ満足することなく、次のゲームへの準備を明日からしたいと思います」と答えた。
そして、最後に「オーストラリアとウルグアイの試合をご覧になられたとのことですが、どのように思われましたか?」との記者の質問には「すごいレベルの高い試合で、ほとんどの選手がヨーロッパでやっているということでやはり技術にしても、戦術にしても、戦うモチベーションもパーフェクトだったんではないかと思います。すごく刺激になりました」と謙虚にコメントを残し「それじゃ、いいですか? お疲れ様です!」と自らインタビューを締めくくり、石田と握手を交わした。

[ 日本人Aリーガー3選手の戦績 ]
— 第15ラウンドまで —

[シドニーFC]

三浦 知良
4試合出場
270分出場
2ゴール
0アシスト

[パース・グローリーFC]

石田 博行
12試合出場
607分出場
1ゴール
2アシスト

[ニュージーランド・ナイツFC]

今矢 直城
9試合出場
373分出場
0ゴール
0アシスト
ゲストプレーヤーとして、第12ラウンドのクイーンズランド・ローアーFC戦から出場。その試合では後半途中から、次節のパース・グローリーFC戦は後半32分までの出場。随所にカズらしさを見せたものの得点に絡むことはできなかった。しかし、第14ラウンドでのアデレード・ユナイテッドFC戦で爆発。Aリーグ移籍初ゴールどころか、得意の左足で2点を決める。Aリーグ最年長得点者というおまけつきでもあった。 Aリーグ開幕から途中出場が続き、スタメン出場は第4ラウンドから。迎えた第7ラウンドのニューキャッスル・ユナイテッド・ジェッツFC戦では持ち味が存分に発揮され、正確なクロスから2アシストを記録。しかし第9ラウンドのメルボルン・ビクトリーFC戦で右足首を負傷。不屈の精神で第13ラウンドのシドニーFC戦で復帰し、第15ラウンドのセントラルコースト・マリナーズFC戦で待望の初ゴールを上げた。 怪我のため第5ラウンドのパース・グローリーFC戦がAリーグ初出場となる。第10ラウンドのセントラルコースト・マリナーズFC戦では、正確なコーナーキックとシュートを2本放つなど今シーズン最も軽快な動きを見せる。ところが続く2試合はともにスタメンで出場するも、チームの結果が伴わない。第15ラウンドのクイーンズランド・ローアーFC戦では、ラスト10分前に出場、シュートを1本放つも得点に絡めずチームは引き分けに終った。


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