11月18日、雲ひとつない晴天だった。シドニーFCの本拠地、Aussie
Stadium の駐車場の植え込みには、紫色の花をつけたジャカランダの木々が青空いっぱいに幹を伸ばしていた。通常、パースでも10月下旬に咲き始めるこのジャカランダだが、まさか今年は、シドニーで最初に見るとは思わなかった。
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Aussie
Stadiumの受付で、シドニーFCの広報担当を待っていた。時計に目をやると、シドニーFCの公開練習が始まる10時より30分早い。すると、自分の目の前を右から左に通り過ぎる一瞬の“何か”を感じた。顔を上げると、カズこと三浦知良がスポーツバックを肩から背負い、白と黒のプーマのジャージを着て、ファスナーを首元まであげ、スタジアムに向かっていく姿があった。
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9時45分、シドニーFCの広報担当と挨拶を交わし、スタジアムの中に案内される。そして5分後、カズがグラウンドに姿を現した。ペトロフスキー(背番号11、Sasho
Petrovski)と握手を交わした後、何か笑顔で話しながら、グラウンドの中央に2人で歩を進める。グリーンの芝生を踏むカズのプーマのシューズが光っていた。そして、胸の19という数字は、何か彼の初心を物語っているようでもあった。ペトロフスキーとインサイドキックでボールを蹴り始める。軸足をゆっくりボールの横に置き、くるぶし辺りで捕らえるボールとのコンタクトを噛みしめているようだった。
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10時、トレーナーの指示のもと、選手達はグランドを大きく一周する。先頭を走るカズ。テレビでお馴染みのあの走り方だ。一周した後は、ダッシュ。合い間の水分補給の時は必ずと言っていいほど、他の選手とコミュニケーションを取る。
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10時30分、ボールを使った練習が始まった。5角形を作り、パスを回し始める。汗をかきながら全力で走るカズの姿勢が印象的だった。声が出ていないことを指摘したかったのか、リトバルスキー監督自ら声を出し、選手達を鼓舞する。その後、2対1の練習が始まり、左足を振り抜いたカズのシュートが、サイドネットを揺らした。ボールへの勢いを感じる。ボディバランスも見事だった。
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11時、2対1の練習を終え、グラウンドの半分を使い、10対10が始まった。センターフォワードにポジションを取るカズ。ディフェンダーと競り合いながら、右足でシュートを放つ。15分後、フォワードとディフェンダーに分かれて練習が再開する。カズは、監督の指示を受けながらシュート練習。左右の足から放たれるシュートは、ボールの芯が捕らえられていた。11時30分にはディフェンス組の練習にフォワードとしてペトロフスキーと入る。明日の先発フォワードは、この2人なのかと予想してしまった。11時40分、カズだけ他の選手よりいち早く練習を終了し、ドレッシングルームに引き上げた。
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